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富士山

富士登山記 プリンス、吉田ルート登山(2019年7月)

富士宮五合目-宝永山

2019年7月13日

午前4時前。同室の2人組が起きて登山の準備を始める。私は4時ちょうどで目覚ましをセットしていたが、眠りが浅かったこともあって、彼らにつられるように起床して準備を始めた。

午前4時の富士山
午前4時の富士山

準備を終わらせて五合目レストハウスの裏口から表に出ると、そこにはまだ明けぬ青い夜空を背景に、富士山が悠然とたたずんでいた。前日に引き続き、五合目から上の天気は良さそうだ。

4時15分、いざ、登山開始(海抜2390m)。私は富士宮ルートの坂道を登り始めた。

昨日のうちに五合目までやって来て一泊したのは、登山の前に少しでも標高の高い所で長い時間居ることで高地順応できればとの計算だった。結果から言うと、今回のその目論見は成功ということになったのだが、さすがに歩き始めはペースがうまくつかめず、少しばかり息切れが発生してしまった。

4時29分、六合目に到着。コースタイム25分のところを15分で到着。やはり息切れはハイペースが原因のようだった。

富士宮ルート六合目
富士宮ルート六合目
富士宮ルートとプリンスルートの分岐点
富士宮ルートとプリンスルートの分岐点

六合目は富士宮ルートと、私がこれから挑もうとしているプリンスルート(当時皇太子だった徳仁親王殿下=今上天皇=が2008年に辿ったルートのためこの名がついた)の分岐点である。富士宮ルートはこの先幾つも山小屋があるが、プリンスルートは途中から御殿場ルートに合流するルートで、この先八合目まで山小屋が無い。即ち、六合目にある雲海荘、宝永山荘の2つの山小屋が屋根の下で休憩できる前半唯一のチャンスになる。

しかし、若干のオーバーペースで息切れがあったものの、分岐点でルートを確認している間にすっかり回復した。それに、今日の天気なら屋根の下でなくても割と快適に休憩を取ることはできそうである。私は、ここではルートの確認をするにとどめ、すぐさま先へ向けて出発した。

六合目から暫くはなだらかな下り坂だったが、10分ほど歩くと風景が変わった。目の前に突如、巨大な"壁"が現れたのだ。

宝永火口
宝永火口(クリックで登山道を分かりやすく表示)

宝永火口である。

富士山最後の噴火は1707年(宝永4年)の「宝永大噴火」だ。その時の火口跡がこの宝永火口になる。昨年、御殿場ルートを下った時に上からこの山を見たことはあったが、下から見上げると全く印象が違う。噴火という猛烈な力でえぐられた様がありありと分かる姿で、今は全く火も煙も出していないにもかかわらず、火山という自然の猛威を生々しく見せつける、荒々しい光景だった

プリンスルート最大のハイライトは、この宝永火口の真っ只中を登る(もしくは下る)ことにある。

プリンスベンチ
プリンスベンチ

宝永火口の登山道の入り口(宝永山第一火口底)に到着。遠目に見ても壁のように見えていた火口が、近くに寄ってみると益々壁のように思えてくる。

ちなみに、入り口近くにあるベンチは、徳仁親王殿下も休んだということで、「プリンスベンチ」の通称で呼ばれている。

4時46分、いざ、宝永火口登りに挑む。

傾斜も厳しいが、それ以上にこの坂道が登山者を悩ませるのは、砂地で滑りやすいことだ。「3歩進んで2歩下がる」と、どこかの歌で聞いたようなことがよく言われていて、うまく歩かないと1歩足を進めたかと思えば砂地に滑って後ろに戻ってしまう、ということになってしまいがちだ。
宝永火口の登山道
砂地で滑りやすい宝永火口の登山道


他の人がつけた足跡を足場として利用するのが常道だというが、この登山道は吉田ルートや富士宮ルートに比べてマイナーで登山客が少ない穴場で、確かに私の前に他の登山客は見当たらず、後ろにも1グループが登っているのが見えるだけだ。しかも、このルートの開山日は僅か3日前の7月10日で、まだ殆どまっさらの状態だ。足場になるような足跡はほぼ見当たらなかった。

そこで、私は歩き方を少し工夫してみた。

前に出した足を、上から踏み下ろすのではなく、足の裏を水平にして爪先を斜めの地面に何度か「ザッ、ザッ」とくさびを突き刺すようにして踏み固め、足場を良くするというものだった。それでも完全に滑らなくすることはできなかったが、普通に歩くよりも遥かにスムーズに登ることができた。

23分ほど歩いたところで、まず右へほぼ垂直に方向を変える。それから更に8分歩いたところで、今度は左へほぼ垂直に方向を変える。そんな2段階のスイッチバックで登り進み、5時32分、宝永山馬の背に到着。コースタイム70分とされるところを僅か46分で登り切ることができた。やはり、自分なりに工夫したあの歩き方が良かったのだろうか。

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