バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

大陸中国・重慶―三峡―赤壁

重慶着 ~いい加減にしろ白タク

2000年9月22日

眼下の雲が突如、薄くなった。
飛行機の窓から覗いてみると、長く、そして驚くほど幅の広い河が見える。まぎれもなく、長江だ。そして、河がS字形にカーブしている所の真ん中あたりが、何やら灰色の物体でせき止められている。あれが恐らく、葛州ダムだろう。
中国の大地に降り立つ前から、私の気持ちは異様に高ぶった。

重慶空港の国際線到着ロビーは、驚く程小さかった。
飛行機を降りて、係員が1人もいない検疫を通過し、階段を下りると、チェックインカウンターがある。そこを抜けると、目の前に託送荷物のコンベアが1本だけあり、そのすぐ右手に、出口が見える。要するに、チェックインカウンターの内側から、空港出口が見える構造になっているのだ。
重慶空港は2000年当時、国際線が3都市(名古屋、バンコク、ソウル)としかつながっていなかった。直轄都市にしてはかなり少なく、これでは国際線ロビーのこのお粗末さも、無理はない。

さて、重慶の市街に向かうか、と思って国際線ロビーを出ると、ここで早くも問題にぶち当たった。駐車場には、団体用のマイクロバスや白タクばかりで、リムジンバスや正規のタクシーが見当たらないのだ。仕方なく、白タクに乗って空港を起ったが、しばらくすると、右手の方に、正規のタクシーや路線バスらしきものが沢山見えてきた。

[しまった、国内線方面に行けば良かったのか]

気が付いた時には既に遅し。タクシーは空港をグングン離れていった。
仕方ない。これで街まで行こう。しかし、その前に、立ち寄らなければならない所がある。
何と、重慶空港の国際線ロビーには、両替できる銀行が無かったのだ。そこで、途中で中国銀行に行って両替をする必要があった。1件目はトラベラーズチェック(TC)を受け付けてもらえず、2件目の中国銀行でようやく、両替をすることができた。
これでまず、余分な時間を費やしてしまった

次に向かう所は、民航のチケットオフィス。これから船の旅が長くなるので、リコンファームを重慶で済ませておく必要があったからだ。
しかし、運転手はまっすぐ民航へ行こうとはしない。
「三峡下りに行くつもりか?」と彼は聞いてくる。
「行くつもりだ。日本で予約を済ませてきた」と私は答えた。しかし、彼は「予約を済ませてきた」という言葉を無視し、「行くつもりだ」という言葉にだけ反応して、用もない旅行社に立ち寄った。
「こんな所はどうでもいい。早く民航に行きやがれ!」
私が怒気を含んだ言葉を浴びせかけても、運転手は「いいから早く降りろ」と手招きする。
私は車を降りた。ただし、荷物を全部持って。 「もうこの車に用は無い」という態度を彼に示し、旅行社の方へではなく、道路の方へと向かった。
事態を察知した彼は、渋い表情をしながら私を車に呼び戻し、旅行社を後にした。

タクシーは、確かに民航のオフィスに到着した。
ただし、私が指定した所ではなく、裏通りの小さな支店に。
「ここじゃない。中山三路の大きな所だ」と、地図を示して言ってみたが、彼は「ここでいい」と言い張る。 試しにそこに入ってみて「リコンファームはできるか」と聞いてみると、案の定「できない。中山三路の方へ行ってくれ」と言われた。
私の怒りは、頂点に達した。

何で用も無い所にばっかり連れていく!
  余計な事をしてるんじゃない!
貴様は、客に言われたことだけしてりゃいいんだ!

と言いたいところだったが、中国語でどう言えばいいのか分からない。 それに、拝金主義にまみれたこんな類の奴に、言うだけ無駄だろう。
ようやく目当てのオフィス近くに着いたところで、私は高い金を払って車を降り、壊れんばかりに力一杯、ドアを閉めて立ち去った。

ようやくたどり着いたオフィスは、既に営業時間を終えていた。奴に余計なところへ引きずり回されなければ、間に合ったはずだ ―― 再び、怒りがこみ上げてきた。
リコンファームは、明日の朝一番に回すことにして、私は別のタクシーで重慶駅まで行き、その近くの山城飯店という宿にチェックインした。
ここにしたのは、翌日、大足へ日帰りで行くつもりにしていたので、バスターミナルがある駅の近くがいいと判断したからだ。

部屋で少しくつろいで、ようやく気分も落ち着いた。

明日は大足と、そして夜には、三峡下りの船に乗船だ…。

しかし、私はこの後、とんでもないチョンボをしていたことに気がついた。
日本で予約してきた乗船予約所を紛失してしまっていたのである。

少々パニックになっているところに、ドアをノックする音が聞こえてきた。

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