バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

トルファン-1 ~ブドウ棚の道

2002年7月23日

ウルムチからカシュガル行きの列車に乗るのは、2日後の午後。それまでの間にトルファン(吐魯藩)に行って戻ってくることも可能だ。私はこの日午前、ウルムチの南ターミナルからトルファン行きのバスに乗り込んだ。
今回の旅は、カシュガルまでずっと列車で行くことにこだわっていたが、ウルムチ―トルファン間は長距離バスの方が便利なのだ。しかし、トルファンの後は再びウルムチに戻り、そこからカシュガルまで列車を利用して行くことが既に決まっていたので、ここで長距離バスを利用しても、大連―カシュガルの列車の旅が途切れたことにはならない。

途中まで高速道路の整備が進んでいたことと、バスの豪華さもあって、トルファンまでの2時間40分の旅は至極快適だった。
道中、車窓から無数の風車が見えた。風力発電所である。環境対策については立ち後れているイメージのある中国だが、こうしたクリーンエネルギーの開発も意外に進んでいるようだ。
このような施設が建てられるのも、広大な国土のなせる業であろう。
トルファンに到着し、バスを降りるや否や、1人のウイグル人が声をかけてきた。
「どこに泊まる? オアシス賓館? トルファン賓館?」
そら来た。客引き、しかも日本語 ―― 旅行に当たって、私が一番嫌悪している類の奴だ。特にトルファンの客引きはしつこいと聞いていたが、全くその通りだった。私が無言で「必要ない」の意思を表示しても、全くお構いなし。どこまでも着いてくる。バックパックの重さも忘れて駆け足をして、ようやく振り切ることができた。

目当てのホテル・オアシスホテルのある青年路に入ると、緑に満ちた爽やかな光景が眼前に続く。
トルファン青年路
ブドウ棚が続くトルファンの青年路
ブドウ棚が道の上を覆っているのだ。 ここトルファンはブドウの名産地であり、郊外には葡萄溝という名所もある。いい具合に日よけの役割も果たしており、トルファンのじりじりとした暑さを和らげてくれている。
しかし、トルファンで涼しげなのは、ここ位だ。海は勿論、湖や池や、大きな河もこの街には無い。水が少ない分、自然と緑も少ない。また、この地は内陸の盆地であり、しかも海抜ゼロメートルの低地なのだ。“暑い地域”のありとあらゆる条件を兼ねそろえている。じめじめとした湿気が無いことが、唯一の幸いだ。しかしこうした気候こそ、厳しいシルクロードをシルクロードたらしめている最大の要素だ。

涼しげなブドウ棚をぬって、目指すオアシスホテルに到着。しかし無情にも、このホテルの売り物だったはずのドミトリーは無くなっていた。
「どこに泊まる?」
がっかりした私に、フロントとは反対の方向から声が聞こえてくる。しかも日本語 ―― 振り向いてみると、案の定だった。蝿のようにまとわりついてくる、先程のあのウイグル人だ。
「こっちに着いてこい」 ―― “蝿”はそう言って私を促しながら、ホテルの北に向かって歩いていく。私はその言葉を受けて、南に向けて足を動かした。

ブドウ棚の青年路を離れて、少し西にあるトルファン飯店に到着。ここのドミトリーは、1ベッド34元と少々高い(これで高いと感じる辺りがシルクロード旅行者の感覚だ)。しかし、部屋は冷房完備でまずまず清潔だったので、私はここをトルファン巡りの拠点とすることにした。

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