バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

トルファン-4 ~郊外1日ツアー(2)

2002年7月24日

トルファン郊外1日ツアーは午後の部に入る。

5)葡萄溝
トルファン東郊を巡っていた車は市街近くにまで戻る。停まった所で降り立つと、これまで見てきた茶褐色の光景とはうって変わって、緑色が眼前に広がっていた。葡萄溝である。
葡萄溝
ブドウがたわわに実る葡萄溝内部
ブドウはトルファン名産の一つだ。私もちょうど昨日、ホテル近くの市場で1房買って、水分と糖分を補給していた。ハミ瓜といいブドウといい、シルクロードは甘い果物の宝庫である。
この日のツアーで訪れた場所は、これまで全ての入場料が20元だった。ここも例外ではなく「こんなものかな」と思いつつ、私を含む日本人とタイ人はほとんど自動的に入場した。トルコ人の3人は入場しなかったが、結果的に彼らは“賢明”だった。
ブドウがたわわに実っている光景は、確かに気持ちが洗われる。しかし、これだけブドウがあればブドウ狩りぐらいさせてくれてもいいものを、それができる場所は見当たらなかった。道端にはスパイスや干しブドウの露店が並んでいるが、スパイスはどれが何だか分からないし、干しブドウは数少ない私の天敵たる食べ物なので、いずれも買う気にはなれない。とはいえ、折角入場したのだから何かを楽しまないと ―― ということで、私とMさんは、客引きとの値段交渉が成立したこともあって、とある食堂で昼食をとることにした。
注文したものを待つ間、ウイグル人の子どもが踊りを披露して、私たちの目を楽しませてくれる。しかし、肝心の食事がいつまでたっても出てこない。後から注文した西洋人観光客の食事が先に出てくる始末だ。しびれを切らせて厨房を覗いてみると、これから麺をゆでようとしている様子である。
(なめてるんじゃないぞ!)
私とMさんは堪忍袋の緒を切らせ「もういい!」と食堂を後にした。

6)蘇公塔
市街から程近い所に、イスラムの雰囲気を濃厚に醸し出している建築物・蘇公塔がある。
蘇公塔
蘇公塔
この塔と隣接するモスクは、18世紀のトルファン郡王スレイマンが父オーミン・ホージャのために建立したものだという。塔の前にはオーミンの塑像が威風堂々と立っているが、確かに、そちらの地方の民族を思わせる顔立ちをしている。
保存状態も雰囲気も良かったが、先程の葡萄溝で20元を“無駄遣いしてしまった”気分だった私とMさん、そしてイタリア人3人組は、入場はせずに表の高台から眺めるにとどめた。しかしそれでけでも、十分に見応えはある。葡萄溝で引いてしまった気持ちが、少しだけ元に戻った気がした。

7)カレーズ民俗園
カレーズといえば、中学か高校の社会の授業で聞いたことがある。アフガニスタンなどで見られる地下灌漑水路だ。ここは、そのカレーズの解説をする施設である。
カレーズ
涼しげに流れるカレーズの用水路
子どもたちが水浴び
道端の溝で、子どもたちが水浴び
なるほど、アフガニスタンはほんの少しだが東トルキスタンと国境を接している。国境ひとつを隔てるばかりの渇水の地ということで、同様の施設が根付いたのであろう。
ここカレーズ民俗園に入ると、まず用水路に関する文物を展示した博物館になっている。さらに先へと進むと、軽くまたぐことも可能なほどの川が流れている。一見、細くて頼りなさげな用水路だが、この水が砂漠の民の渇きを潤し、山の幸を育んできたのだ。
しかし、そんな歴史的・社会的なことに思いを馳せるまでもなく、このせせらぎの音だけでも私の心をとらえるに十分だった。この日のツアーで巡ってきた所に対して少なからず不満を抱いていたのだが、それがこの小川の水に洗い流されたような心持ちだ。
参観を終えて表に出てみると、駐車場前にも清水が流れる側溝がある。そこでは、地元の子どもたちがはしゃぎながら水浴びをしていた。小川のせせらぎもさることながら、子どもたちの無邪気さも心を爽やかにしてくれる。

8)交河故城
この日最後に訪れた交河故城は、中国で漢が天下を制していた当時、車師国が都を置いていたといわれる地に建てられた城趾遺跡だ。(現存する遺跡は唐に支配されていた時代以降のものらしい)。二道溝と三道溝という2つの河の分岐点に位置していることから、この名が付いた。この2本の河に挟まれるようにして、南北1600メートル、東西300メートルのエリアに当時の遺跡が広がっている。

交河故城
交河故城

地面や廃墟の色は最初に訪れた高昌故城と同様の褐色だが、規模、雰囲気といった点ではそれを遙かに上回っている。
高昌故城は、当時の様子を想起するのが難しいほど荒廃が進んでいた。交河故城も荒廃してはいるものの、残存している建築物が多い。路地も当時の様子を比較的色濃く残しており、ここがかつて“街”であったことを物語っている。歩いていると、街の息づかいが聞こえてくる、いやそれ以上に、その辺りから古代人がひょっこりと顔を出してくるのではないかと思えるくらいだ。
知らず知らずのうちに、遺跡の一番奥までたどり着いていた。そこには、狼煙台のようなものがポツンと建っていた。ここから外敵に向けて睨みを利かせていたのだろうか。
ここ交河故城の入場料は50元と、この日訪れたその他の場所が全て20元だったのに比べてかなり高い。しかし、それだけの価値はある。私もMさんも、意見は同じだった。
「今日見た中で、一番良かった」

1日ツアーは、以上で終了した。
期待外れだった所もあったが、歴史あり、産業あり、古来からの公共施設ありで、トルファンという地域が凝縮された、悪くないツアーだった。

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