バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

カシュガル-2 ~熱気の日曜バザール

2002年7月28日

この日は日曜。カシュガルを訪れた最大の目的・日曜バザールがとり行われる日だ。
私とMさんは早速、午前から出向いてみた。しかし、行くのがやや早すぎたのか、バザールが行われるべきIzlati Rd.(艾孜来提路)はまだ人の往来も少なく、ひっそりとしている。私たちは時間つぶしにと、バスで少し行ったところにあるアパク・ホージャ墓を参観することにした。
アパク・ホージャ墓
アパク・ホージャ墓
昨日訪れたユスフ・ハズ・ジャジェブ墓同様、この墓の外観もモスクそのものだ。しかし、その中に安置されている幾つもの棺が、ここが間違いなく故人を埋葬した場所であることを物語っている。そして、裏庭に広がる一般の墓地が、ここに埋葬されているのが特別な人物であることを物語っている。(東トルキスタンイスラム教白帽派の指導者とその一家らしい)
形態はユスフ墓と同じように、アーチ屋根とそれを囲むようにして並んだ4つの尖塔が特徴的であり。壁がタイル張りであるあたりも、漢文化圏とは異なる、イスラム建築独特の様式だ。

正午を回ったあたりで、バザールに戻ってみる。果たしてそこには、午前中とは打って変わった光景があった。
道の両側には、数え切れないほどの屋台が出ている。衣服、食材、果物、香辛料 ―― ありとあらゆる種類の品物が並んでいる。
屋台や品物の数以上に圧倒的なのが、買い物客の多さだ。カシュガルばかりでなく、近郊都市の住民も多く来ていることだろう。このあたりの人々全てが週に一度のバザールを待ちわびて、ここに殺到したのではないかと思われる位だ。

これだけの人が集まって、道端だけに収まろうはずもない。当然、車道にまで溢れかえっている。それでも歩行者天国になっている訳ではなく、バスが、タクシーが、ロバ車が、三輪車が、スピードこそ緩めてはいるものの、当然のように走っている。特に、荷を運ぶロバ車や三輪車が面白い。人が行く手を塞いでいるたびに「ボーシュ、ボーシュ、ボーシュ!(どいた、どいた!)」という御者の大声が響き渡る。しかし歩行者は、だからと言って慌てて道を譲るわけでもなく、そのままのペースで悠然とわきにそれる。
シシカバブ(羊肉串)を焼いたりハミ瓜を切り売りしたりして、道行く人々の食欲を満たしてくれる食事処も、東トルキスタンらしい風情があっていい。

日曜バザール
品物と人でいっぱいの日曜バザール
シシカバブを焼く青年
バザールでシシカバブを焼く青年

―― そう言えば、昼食がまだだった。どちらからともなく「シシカバブを食べよう」ということになり、道端の屋台に腰を下ろした。
「シシカバブを」と店員に頼むと「大きいのと小さいのがあるよ」と返ってきた。焼く前のものを見せてもらうと、大きい方の肉の塊はカメラのフィルム2個分ほどもある。先日トルファンのビアガーデンで食べたものよりも大きい。折角だから、こちらにチャレンジすることにした。
羊肉と、餃子のお化けのようなものを焼いた料理で胃袋を満たした私たちは、再びバザール巡りに出た。
日曜バザール屋内
屋内スペースも人でぎっしりだ

これまでは道路わきにばかり目が行っていたが、よく見ると、奥の方にも屋内スペースがある。一歩足を踏み入れてみると、そこには表以上の熱気が待ち受けていた。店が所狭しとひしめき合い、通路もそう広くはない分、人口密度が異様に高くなっている。客引きや値段交渉の声で、どこもかしこも賑やかだ。
新しいシャツが欲しいと思っていたMさんも、ここでの買い物に挑戦だ。品物を吟味し、値段交渉し、満足いかなければ次の店へ ―― シルクロード商人との駆け引きを、すっかり楽しんでいる様子である。
衣服、日用品、香料などが売られている中で、異彩を放っていたのが、ウイグルナイフの市場だ。品物が品物だけに、やや緊張しながらも散策してみたが、他のどこよりも客引きがしつこく、強引だ。ある店員などは、私の手首を力一杯つかんで引きとめようとする始末である。幸い、Mさんが男の手首をつかんで力を緩めてくれたお陰で振り切ることはできたが、少々危険を感じたと同時に、異文化を楽しんでいた気分が一瞬だけ損なわれた。

このバザールは、決して土産物売り場的ものではない。地元の人々が生活を行う上での必需品を入手する場である。しかしそれだけに、カシュガル人の日常が垣間見える場所であると言える。観光地ではない、それでも観光者にとって一見の価値ありという不思議なスポットが、この日曜バザールである。

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