バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ジャワ島(インドネシア)、シンガポール

ボロブドゥール-2 ~ムンドゥット寺院

次に目指すムンドゥット寺院は、地図上で見るとボロブドゥールとパオン寺院を結ぶ直線のちょうど延長線上にあり、最短距離で言えばボロブドゥール―パオン寺院間よりもパオン寺院―ムンドゥット寺院間の方が近そうに見える。 ムンドゥット寺院
ムンドゥット寺院
ところが、パオン寺院―ムンドゥット寺院間の道は逆S字型に湾曲していて、最短距離の2倍ほど歩かされた。

ムンドゥット寺院はボロブドゥールとジョグジャカルタを結ぶ幹線のすぐわきに建っていた。先ほど乗ってきたばかりのジョグジャカルタからのバスから見えていたはずなのだが、どうやら見落としてしまっていたようである。
先ほど見たパオン寺院よりも、敷地は広いし建物の規模も一回り大きい。屋根の上にはやはり、ボロブドゥールやパオン寺院同様、中央を取り囲むようにしてミニチュアの仏塔が並んでいる。肝心の中央部分には何も無いのだが、恐らく、元々はやはり大きめの仏塔が載っていたのではないかと想像される。これが言わば「ボロブドゥール様式」みたいなものなのだろうか。
ムンドゥット寺院内部の仏像
ムンドゥット寺院内部の仏像
壁面はやはり、細緻なレリーフで彩られている。パオン寺院では空っぽだった内部だが、こちらは仏像が3体安置されていた。
仏像の前では、私よりも先に入っていた人々が熱心に祈りを捧げていた。見た目と祈りのスタイルからすると中国系なのだが、お隣のシンガポールあたりから来た華人だろうか。

ここはパオン寺院よりも訪問客が多かったが、その大部分はメインの遺跡を見終わるとすぐに立ち去っていく。しかし、私を引き付けたのは遺跡よりもむしろそのわきにある小さな参道だった。
参道の両脇には仏塔が並び立ち、一番奥には石仏が座している。ここでも、1人の華人が熱心に祈りを捧げる一幕があった。
参道の両わきには仏堂が立ち並んでいる。チベット・ラサのジョカンなどに見られる「2頭の鹿と法輪」(仏陀によるサールナートでの初転法輪を表す)が施された堂もあって、ふとチベットのことを思い出させられた。また、参道正面のもの以外にも野外に安置されている仏像が見られる。中にはパキスタンのラホール博物館で見たことのある「断食するブッダ」のレプリカもあった。
いや、いいものを見させてもらったと、門番の男性に手を合わせて挨拶をして出ようとすると、彼は
「あちらも見て行って下さい」
と、一番手前の堂を指差す。まだ新しい堂の中に入ってみると、立派な仏陀入滅の像が安置されていた。
この参道一帯は明らかに最近になって新しく造られたものではあるが、少しでも仏教への信仰心があるのであれば、遺跡だけでなくここも忘れずに訪れておきたい。

ムンドゥット寺院わきの参道
ムンドゥット寺院わきの参道
「2頭の鹿と法輪」が施された堂
「2頭の鹿と法輪」が施された堂

さて、後はボロブドゥール遺跡のあるエリアに戻るばかりだ。いつもの私なら歩いて戻るところなのだが、今回はいつもよりも疲労が激しい。
それもそのはずだ。ここは赤道直下の国インドネシアなのである。しかもこの日は、午前中はジョグジャカルタの街中を、午後はボロブドゥールの周辺を、かなり精力的に歩いてきた。少しずつ暑さに体力を削り取られ、疲労がピークに達したようだった。
自力での遺跡巡りで行き来の足が定まっていない私を尻目に、旅行社の世話になっている訪問客たちが車で次々と立ち去っていく。
[そうだ  ――  ジョグジャカルタからのバスが通っているはずじゃないか]
しかし、そのバスがなかなか通りかかってくれない。いつまでも同じ場所で待っているのも飽きたので、少し前に進んだところ、三叉路にあるバイク屋の男性が
「バイク? バス?」
と声をかけてくる。
「バスで…」
私が答えると彼は更に続けた。
「バスならここを通るからもう少しここで…」
と話しているうちにちょうど、バスが通りかかった。彼は私のために合図を出し、バスを止めてくれた。お陰で私はバスに乗って楽にボロブドゥールまで戻ることができた。
[インドネシアの人って、本当に温かで、親切だな]
先ほどジョグジャカルタで受けた親切もあって、私はインドネシアの人々が心底好きになった。
しかし  ――  ボロブドゥールのバスターミナルに着くや否や観光客目当てに押し寄せてくる客引きたちが、そんな嬉しい余韻をぶち壊しにしてくれた。

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