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雑記ブログ

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書評「雪の下の炎」(パルデン・ギャツォ)

31年――何の年月かによってそれが長いのか短いのかは変わろうが、それが「獄中にいた期間」となると、「長い」ということになるだろう。しかもその人物は政府の思想に従わないという理由で拘束され、服役期間を度々延長され、釈放されたかと思うとまた拘束されてきた”良心の囚人”だった。それを考えると余りに長すぎると言わざるを得ない。

彼の名は、パルデン・ギャツォ。チベット・ラサ近郊のデプン僧院で仏教を学んでいた僧侶である。

自分の師がインドのスパイと疑われたこと、1959年3月10日、ラサで「チベット騒乱」の発端となった群衆行為が発生した際にたまたまラサに来ていて現場を通りかかったことが、彼の人生を狂わせた。獄中に繋がれた彼は、富裕層の家に生まれたこともあって、侵略国当局の執拗な拷問を受け、”思想改造”を迫られる。手枷足枷をはめられたまま殴る蹴るの暴行を受け、電気棒を口に押し込まれて歯をほぼ全て失ってしまう。
拷問を行った者の中には時として洗脳されたチベット人も含まれていた。また「タムジン」で同じ(そうすることを強要された)チベット人囚人たちから吊るし上げを受けることもあり、同胞が同胞を虐げるという悲劇さえ繰り返された。
同書には彼のみならず、その他チベット人の”良心の囚人”の悲劇が幾つも記されている。

しかし、彼の思想は決して”改造”させられることはなかった。

「人間の肉体ははかりしれないほどの苦痛にも耐えることができ、しかも回復する。傷は癒える。だが、精神が挫けてしまったら、すべては壊れてしまうのだ」

鋼のような強靭な精神力――これが彼に生きる力を与えてくれていた。彼だけではない。侵略国当局が抑圧すればするほど、チベット人を分断しようとすればするほど、政治囚たちは反発を強め、団結を固めていく。力と脅しによる抑圧で仮に土地を支配できたとしても、人の心と誇りは支配できないのである。

同書はパルデン氏の悲劇の人生を描き、侵略国当局の悪逆非道さ、抑圧による人権無視の支配のむごたらしさと虚しさを訴えるものであると同時に、そうした数多くの”良心の囚人”たちの群像劇でもある。

1992年、59歳になった彼はようやく自由の身となった。しかし彼は故郷にとどまらず、亡命の道を選ぶ。彼の強く熱い心は、彼が受けた非道な行為を全世界に訴えることを決意させたのである。
ラサからシガツェ、ニャラム、ダムを経て、カトマンズへ――その道筋は奇しくも、私が2007年のアジア旅行で辿ったネパール行きの道筋とほぼ一致していた。私がオフロード車でチベットの景色を楽しみながら通った道は、パルデン氏にとっては自由への、そして世界に向けての訴えへの、決死の道だったのだ。

彼はインド・ダラムサラでダライ・ラマ14世との謁見を果たす。そしてついに1995年、国連人権委員会の会場で、侵略国代表も出席する目の前で証言を行う。力による抑圧に対する言葉による反撃が始まったのだ。同書を世に出したのもその一環である。

彼の闘いは、拷問と脅迫から解き放たれた今もなお、続いているのである。

先述したように、侵略国の抑圧に抗う”良心の囚人”は彼だけではない。彼が去った後の獄中でも、自由を求める闘いはなおも続いているだろう。”雪の国”チベットで自由を求める熱い思い――「雪の下の炎」は消えることはない。

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同書は1998年に出版されたものの一度は絶版となった。2008年、mixiを中心に復刊運動が展開され、「復刊ドットコム」にリクエストが集まった結果同年12月、めでたく復刊が実現し、2009年1月には書店店頭にも並ぶに至った。

再び絶版とならないようにするためにも、このブログを読んでいる皆さんにもご協力お願いしたく存じます。右上にアマゾンのバナーが設置してあるので、そこから購入することができます。

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尚、蛇足だが、パルデン氏が逮捕される前の1951年の出来事として、以下のような記述があった。

「中国側は、張経武の到着に際して集まったギャンツェの群衆という写真を発表した。その説明には『中国政府代表を歓迎するチベットの民衆』と書かれていた。とんでもない大嘘である。私たちは私たちの指導者であるダライ・ラマのお姿を一目見ようと集まったのだ。」

もしかするとその写真とは、私が「嘘八百 中国官製『チベットの50年』」でその信憑性に疑いの目を向けたあの写真と同じものかもしれない。

<追記>
『雪の下の炎』 を口コミで広めよう! - “Fire under the Snow” by Palden Gyatso –」にて当エントリーをご紹介いただきました。
http://www.palden.info/?p=356


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