バス憧れの大地へ

雑記ブログ

「聖地チベット展」を参観して(1)

チベット展入場口
チベット展入場口(2009年10月撮影)

以前から書いていたように、ツッコミを入れながらの「聖地チベット展」参観を本日決行。
体調不良でドタキャンした人が出てしまって参加者2人という寂しい結果となったが、めげずに上野の森美術館に出陣した。

入り口こそ閑散としていたが、中に入ると結構な人出。
まずは主催者あいさつや祝辞が掲示されていたが、その中の「中国チベット自治区文物局」なるもののあいさつがまずツッコミどころ満載。

「私たち(筆者注:チベット人)の祖先は、中国文化の養分を吸収し・・・」
――チベットが中国文化の何を吸収したというのか? チベットが吸収したのはむしろインド文化の方が圧倒的に大だぞ。
「民族の文化を発揚し」
――チベットの文化を破壊し尽くしたのは一体誰だ?
「文明の成果を共に享受しあい」
――中国が現在やっていることは中国側の文明の一方的な押し付けにしか見えないが?

「中日の文化交流に・・・」
――日本語で書く時は「日中」とするのが常識だぞ。誰が翻訳したか知らないが、まず中国人だろう。

と、入場していきなりこれだけのツッコミが成立してしまう。
果たして、その展示内容はいかに・・・

※最初は本日分だけで一気に書いてしまおうと思ったのですが、長くなりそうなので連載で書いていくことにします。

「さとりへ導く三つの心と発菩提心」―ダライ・ラマ14世猊下法話

1年前にダライ・ラマ14世猊下を招いて講演が行われた東京・両国国技館。

今年も猊下が御来訪され、10月31日には法話をしていただいた。

2007年のダラムサラから始まって、猊下のお話を拝聴させていただくのはこれで3度目となる。第1回のダラムサラでは仏教の難しい教義についていけず、第2回の昨年・両国国技館では「心の在り方」に関する分かり易い内容だった。
今回は、「さとりへ導く三つの心と発菩提心」というテーマでの仏教法話。ここ1年で仏教関連の講演を幾つか拝聴して2007年当時に比べれば少しはましになったのではと思われるが、果たしてどこまでついていくことができるか。

14時すぎ。両国国技館正面側に設置されたステージに、猊下が拍手で迎えられて御登壇。ありがたい法話が始まる。

今回は専門用語が多く含まれる仏教法話ということもあってか、英語ではなくチベット語でのお話となった。
まずは、一般的な仏教のお話から。今回は特に「自我」について時間が割かれ、「自我意識の強いものを無くし、他者を身近に感じるようになることで、他者に対する怒りが無くなり、恐怖や不安も減る」、「自我には始まりや終わりがあるのか」(神を受け入れる宗教では、自我は神によって生を受けた時に始まり、神のジャッジによって天国もしくは地獄に行った時に終わるが、神を受け入れない宗教=仏教=では、自我は継続性のあるもので始まりや終わりは無い)などといったお話が印象的だった。

そして、今回のテーマである「三つの心」。三つの心とは、

  1. 出離の心(輪廻から抜け出したいと思う心)
  2. 菩提心(一切衆生を救済するために自分自身が悟りを得たいと思う心)
  3. 正しい理解(空を理解する智慧)

である。これらの3要素を修行によって育むことで初めて輪廻の源を絶ち切る(解脱する)ことができる、というお話だった。
「空」の何たるかすらまだよく分かっていない私にはやはり難しいお話だったが、それでも今後仏教を理解するための大きな一助となることは間違いないだろう。

さて、この日の猊下はどうしたことか、いつもに比べてちょっと力強さやユーモアが足りないようにも思われた。途中でお薬をのまれるシーンもあり、「本調子ではないのかな?」と少し心配にもなった。
しかし、最後の最後、質疑応答のラストバッターとなった女の子を叱咤激励するシーンで、いつもの力強い猊下ご降臨! やはり猊下はこうでなければ。

<講演の様子>

話の本筋とは離れるが、上記の質疑応答に立った女の子が印象的だったので以下に。

20歳前後と思われる若い女性だったが、前の質問者が質問する後ろで順番待ちをしている時から、がちがちに緊張している様子がありありと分かった。震えながら両手で口を隠し、泣き出すのではないかとすら思われた。
そして順番が回ってきて発した質問が、

「私は自分に自信が持てません。どうすれば自分を好きになれますか? 法皇様はご自分のことがお好きですか?」

やはり――そういう子だったか。
それに対する猊下のお言葉は

「他者への慈悲心を起こすためには、まず自分を大切に思わなければなりません。自分を好きでなくてはいけません。あなたも幸せなときには自分を嫌いとは思わないでしょ。そのような状況を作るように、幸せになるように今日言ったこと(出離の心、菩提心、正しい見解)を行ってみましょう。
もし幸せでないときは、広い視野を持ってみましょう。まわりを見てみましょう。
そして、問題は勇気を持つための条件と考えましょう。問題が起きたら自分が克服する良い機会を得たと考えましょう。問題が起きても自分が克服できると強く思わなければなりません」

(※mixiの『【FREE TIBET】チベット』の書き込みより転載させていただきました)

私の知り合いがたまたま彼女の隣の席で、その時の様子を詳しく教えてくれた。
「彼女手を挙げている時からブルブル震えていたんですけど、前に並びに行った時はパーッと駆けて行って。(ステージ上部に設置された)画面でも震えていたのが分かったけど、(質問が終わって)戻ってきたら、表情が全然変わっていて――あれが彼女の人生を変えたんだな~って思いました」
さすがは猊下である。

私は彼女に、以下の言葉を送りたい。

「こんな大勢の前で自分の悩みを言えるなんて、そうそうできないぞ。
いい度胸してるやんか。
もう十分、自分に自信を持ってええぜ!!」

チベットクラシックコンサート テチュンリサイタル2009

東京・サントリーホールにチベット音楽の第一人者・テチュンさんを招いてチベット音楽コンサートが開かれ、私も開演前と後はスタッフとして、開演中はオーディエンスとして参加した。
Techung
(写真はイメージ)
集合場所に行ってみると、テチュンさんご本人がまるでボランティアスタッフの一員かのようにごく自然にその場にいて、スタッフ一人ひとりと挨拶をかわしている。

指定席は全て売り切れ、自由席もほぼ満席という盛況の中、古くから伝わる歌、テチュンさんのオリジナル曲合わせて10数曲が演奏された。どの曲も目を閉じるとチベットの風景が思い出され、また映画「雪の下の炎」で挿入歌として使われた曲が演奏された時にはパルデン・ギャツォ師の顔が目に浮かび、涙すら浮かんでしまった。
前半はクラシックコンサートらしく、会場は静かに音楽を聴いていたが、後半に入ると、テチュンさんの呼び掛けもあってある時は手拍子が入り、ある時はステージと客席の間でかけ合いがあったりするなど、まさに演奏者と聴衆が一体となった、理想的な演奏会となった。
アンコール前の最終曲が終わると同時に、ルンタ(経文を印刷した小さな色紙)がステージにまかれる。シンプルに徹した演奏会がこの瞬間、華やかに彩られ、拍手の後、熱いアンコールの手拍子が沸き起こった。

そして、テチュンさんの演奏に負けず劣らず印象に残ったのが、チベット人の子どもたちの歌だった。
当日の解説によると、チベットでは日本でいうわらべ歌のような歌が極めて少ないそうで、テチュンさんは7年前から子どもたちに歌を通して民族のアイデンティティを育んでもらおうとプロジェクトを進めており、ようやくレコーディング可能なところまでこぎ着けたという。
この日舞台に上がった子どもたちは在日チベット人の子どもたちで、子どもらしいはにかんだ表情が初々しかった。司会の方が「お名前は?」と尋ねても「・・・」と声を出して答えられないちびっ子もいて、「おいおい、ちゃんと歌えるのか?」と心配したが、いざBGMが流れると、きっちり2曲歌ってくれた。
子どもたちにとってはいい経験、いい思い出となったことだろう。この子どもたちが歌を通してチベット人のアイデンティティを受け継いでくれることを願ってやまない。

ステージ終了後も、テチュンさんはサイン会をしてくれたり、記念写真に入ってくれたりと、来客の方々やスタッフと気さくに接してくれた。音楽だけでなくこの気さくさが、テチュンさんが人を引き付けるゆえんなのだろう。

チベット写真展”On The Way Home Vol.2″(所沢)

知り合いの方が所沢で2009年7月のチベット旅行の写真展をやっています。

写真展会場

チベット写真展”On The Way Home Vol.2″
マウンテンカフェ"~8月29日

マウンテンカフェ
http://geocities.yahoo.co.jp/gl/yeitaro
埼玉県所沢市緑町1-17-11-1F 
西武新宿線・新所沢より徒歩5分
Tel/04-2928-2719 
日曜定休・13:00~23:00


私の社会派?写真展とは違い、(一部キャプションでFree Tibetをさりげなく訴えていますが)風景、寺院、動物、チベタンの笑顔など、純粋にチベットの旅の写真を楽しむことができる展示です。

オーガニック料理に舌鼓を打ちながらチベット旅行気分はいかが?

代々木「アースガーデン 夏」Songs for Tibet from Japan

東京・代々木公園にて「アースガーデン 夏」が開催され、チベットブースで1日張り付いていました。

本日の主役は、チベット!! ステージとそのわきのスペースでは「Songs for Tibet from Japan」と題し、チベットを支援するアーティストたちが素晴らしい演奏を披露してくれました。
ステージ
ステージにはチベット国旗とタルチョがはためいていました!!
チベットブースには、Students for a Free Tbet Japan、KIKU、アムネスティ、チベット交流会、宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会が出展し、いろいろな形でFree Tibetを訴えていた。

七夕の短冊飾り
七夕の短冊飾り
チベット文字書写体験
チベット文字書写体験
チベット版画体験
パルデンさんの人生すごろく
パルデンさんの人生すごろく

いろいろな形でチベットに関するアピールがなされましたが、最後の、「雪の下の炎」のパルデン・ギャツォ氏の人生すごろくについては、チベット問題を楽しみながら学ぶというのは分からないでもないですが、彼の過酷な半生を面白さ交えて伝えることには正直、違和感を感じました。

そして、本日のメインである音楽イベント。
音楽イベント
君たち、これがFree Tibetのライブだって分かっているんだろうな?
というツッコミを入れたくなる気分にもなりましたが、とにかく異様なほどの盛り上がり。

しかし、個人的にはメインステージの演奏よりも、そのわきで繰り広げられた演奏の方にシンパシーを感じたりしています。

さりげなくチベット問題ほかをアピール
さりげなくチベット問題ほかをアピール
チベタンアーティストの演奏
チベタンアーティストの演奏

最後には、このライブの主役である難波章浩さんから力強い「Free Tibet !」のお声。これをきっかけに、若い世代にチベット問題を考えてもらえればと強く願います。

アースガーデンは7/5も開催です。ぜひチベットブースにお越し下さい

写真展実況(2日目)

10:50 写真展2日目設営(追加)完了。
会場
ギャラリーのスタッフの方から「外から作品が見えた方がいい」とのアドバイスがあり、急遽最初の部分に1枚追加。
更にこんなものも追加。
会場

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11:00 2日目開始。
相変わらずこの時間は人通りが少ない。昨日よりも少ないくらいで危機感を感じ始めていた11:50、ようやく最初のお客様がご来訪。

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2007年のラサで同宿だった青年が駆けつけてくれた。

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来客がなかなか増えないまま、雨が降ってきた・・・。
雨

土曜よりも多く見込めるだろうという予想とは逆に、来客は少なくなっている傾向。道ゆく人そのものが明らかに減っている。
暫く主催者が持ち場を離れて呼び込みをしても問題ないという悲しい状況になったが、14:30前、ようやく客足が戻ってきた。

雨のため苦戦しつつも、一時は大勢のお客様で溢れ返る。
20090628_04
知り合いもたくさん訪れ、ちょっと賑やかになってきた

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とてつもない大雨に・・・

16時すぎ、ようやく50人に到達。昨日に比べ1時間遅れ。

17時前。
2ちゃんねる経由チベットサポーター団体様ご来訪!! 一挙8人。
団体様

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最後のお客様。
20090628_06
19:00 撤収開始。
2日目の客入りは82人。
初日と比べて40人の減でしたが、天気のことを考えればまあこんなものでしょう。

写真展実況

いよいよ写真展開始!!

11:00、設営完了
会場

まだ客足は少ない・・・
チベットグッズを扱っている東京・渋谷のImport Gallery Ako様よりおにぎりとひまわりの花の差し入れを受ける。

午後になって、ぼちぼち人が訪れるようになる。
20090627_02

14時すぎ、中国人の若い男女が通りかかり、中国語で
これって、どこの国?

――やはり、チベットのことを一番知らないのは中国人のようだ。

黙って見ている人が多い中、「~~~だって、ひどーい!!」と声に出して反応してくれる人もいる。こういう反応をしてくれると、遣り甲斐があるというものである。
「あー、ソンツェン・ガムポって世界史で習った!」と言う若い女の子も。教科書よりもこっちの方がいい教材ですよ! これを機会にチベットのことを学んでいって下さい。
香港人の来訪者あり。“Good!”のお言葉をいただいた。果たして説明文を理解できたのか?という疑問はあるが、いかに中国に返還されたとはいえ、香港人と大陸人とでは相当意識が違うようである。

なかなか人が集まらず、苦戦・・・18時前、ようやく100人突破。
(私としては満足していないが、それでもギャラリーのスタッフさんによれば『入っている方』だという)
18時前

19時台に入ると極端に人通りが減ってしまった。30分で来場者1人・・・
19時台後半に少し盛り返してくれたが、それでも19時以前と比べると寂しい。

19時55分。人通りも無くなり、観覧する時間も無くなってきたので、初日終了。

初日の来場者は123人。日曜はもっと増えると思われるので、2日で300人は期待したいところである。

チベット潜入『祈りは武器より美しい』トークライブ&パクチーパーティー

昨日のことになるが、写真展のノウハウ学習と宣伝も兼ねて、写真展を東京・世田谷で開いている野田雅也さんと西条五郎さんのトークショーに参加。10年前からチベットに関わってきた野田さん、チベットに関わったのは2008年の長野からと経歴は短いながらlivedoorで渾身のチベット潜伏記を書いた西条さんのトークは、時折ユーモアを交えながらも、武装警察の連中が徘徊する最近のチベットを実際に見た人でないと分からない緊迫感が伝わってくるものだった。

さて、今回の写真展&トークイベントが開かれたのは、旅人を応援するレストラン「パクチーハウス東京」。その名の通り、パクチー料理専門の店である。
この日のトークイベント後、パクチー料理のパーティーが開かれたのだが、パクチーといえば、私の中国滞在時には「不要香菜!!」が料理を注文する際の外国人の決まり文句に等しかったほどの嫌われ者だった。私自身も「慣れたけど好きとは言えない」という感じだったので、正直最初はパクチー料理というものにちょっと抵抗があったのだが、一口食べてみると・・・

お い し い ・・・

パクチーってこんなに美味しかったっけ? 全然臭くないぞ!!
店長によると、その秘密は「日本国内のいい土で育ったパクチーだから」ということだった。何と、日本でパクチーが作られていたとは!!
パーティー後半には、パクチーを使ったモモやトゥクパなどのチベット料理も出てきて、来場していたチベットファン、パクチーファンを喜ばせていた。

料理を楽しむこともいいけど、宣伝、宣伝・・・
トークイベントの最後に写真展の告知をさせていただき、パーティー中も来場者と写真展のことやチベット旅行のことについて大いに語る。そして、野田さんや西条さんほかイベント開催経験者には写真展のノウハウを教えてもらう。
そして、何としても写真展を成功させなければ、と決意も新たにさせられる。

パクチーハウス東京は、小田急小田原線経堂駅から南へ歩いた、モスバーガー隣、CoCo一番屋正面のビル2階にある。ぜひご来パクを。

宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会

昨日(5月23日)のことになるが、「宗派を超えてチベットの平和を祈念する僧侶の会」にボランティアスタッフとして参加。東京・護国寺に仏教各宗派のお坊さんや俗世間のチベットサポーターが参加し、チベットの平和を祈る。

本尊法楽、代表挨拶等の後、特別ゲスト・ダライ・ラマ法王特使ケルサン・ギャルツェン氏の講演。私は雑務や写真撮影に追われて断片的にしかお話を聞けなかったのだが、どうやら5月21日の講演とほぼ同じ内容だったようだ。とはいえ、21日にはいなかった顔ぶれの方が多かったので初めての方には貴重な話を聞く機会になったことだろう。
熱弁するケルサン氏
熱弁するケルサン氏(右から3人目)
続いて、早大教授・石濱裕美子氏のお話。こちらも断片的にしか聞けなかったが、欧米で仏教が、ダライ・ラマ法王がいかに受け入れられてきたか、などのお話をいただいた。

最後に、チベット語による読経。チベット人の若者たちも集まり、まさに「宗派を超えた祈り」が会場内に響く。
チベット語による読経
チベット語による読経

今回のテーマは「聞・思・修 ~学び、考える、行動する~?」というものだった。今回のイベント告知のページによると、

三慧、聞・思・修 ―。学び、論理的に考えて、繰り返す瞑想実修により「正しい理解」を身につける。このプロセスから生じる仏陀の叡智が、慈悲(共感共苦)による「行動」へ、そして「社会参加する仏教」へ。宗派を超える思いが、今、一歩踏み出します。

とのこと。チベットのことを「学び、考える、行動する」こともまさに仏教的プロセスであるということになる。
この呼び掛けは仏教界にのみ向けられたものではないだろう。私のような俗人にも、仏教的アプローチで、チベット問題を学び、チベット問題を自分の頭で論理的に考え、また自分に何ができるかを考え、そしてそれを実践する、ということが求められる。
今回のイベントの質疑応答で、「正しい理解」が足りないまま全く的外れな質問をして参加者たちから大ひんしゅくを買った質問者がいた。
かくいう私も、「聞・思・修」―全てにおいてまだまだ全く不足している。今後も様々なアプローチで、チベット問題に関する「聞・思・修」の修養を重ねていく所存なので、何卒各方面からご鞭撻いただきたく思う。

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ダライ・ラマ法王特使ケルサン・ギャルツェン氏来日講演会

先日告知したダライ・ラマ法王特使ケルサン・ギャルツェン氏の来日講演会を拝聴させていただいた。

あらためて、ケルサン氏のプロフィールを以下に掲載。

<ダライ・ラマ法王特使(使節員) ケルサン・ギャルツェン氏 経歴>
1951年 チベット・カム地方に生まれる
1963年 勉学のためスイスへ。ビジネスおよび事務管理を学んだ後、 1983年までスイスの大手銀行に幹部として勤務
1983年 インド・ダラムサラの中央チベット行政府の情報・国際関係省(外務省)において1年間のボランティアに従事
1985年 スイスにあるチベット事務所においてダライ・ラマ法王の代表者に任命
1992年 ダライ・ラマ法王の秘書官としてインド・ダラムサラにあるダライ・ラマ法王事務所に異動
1999年 ダライ・ラマ法王の駐欧州連合特使として再び欧州へ異動
2005年 スイス・ジュネーブにあるチベット事務所の代表となり2008年春まで兼任。現在は、ダライ・ラマ法王により任命されたチベット代表団特使のひとりとして中国政府との交渉にあたっている

<職責>
ダライ・ラマ法王の駐欧州特使として、チベット亡命政府と中華人民共和国との対話の促進を図ることを主要な職責とし、これを全うすべく、ダライ・ラマ法王の中道政策を欧州諸国に伝え広め、支援を得、チベット問題が平和的に解決するよう取り組んでいる。
ダライ・ラマ法王は、チベットの分離独立を求めているのではないことを明確に表明しておられ、中華人民共和国という枠組みのなかで名実を共にする自治権を得るべくご尽力されている。
これを伝えるための中国政府代表団との対話にあたり、ダライ・ラマ法王が委任された2名の高官特使のうちのひとりとして、2002年以降、中国指導部との8回の公式協議と1回の非公式協議に臨むとともにチベット交渉対策本部のメンバーも務めてきた。
ダライ・ラマ法王の特使という立場から、チベットに関する講演やインタビューにも精力的に取り組み、チベットの人々の悲劇に光をあてるべく尽力している。

会場は東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センター国際会議室。通訳機による同時通訳付きと、結構本格的である。

19時、ケルサン氏入場。TVニュースなどで既に登場しているのでご覧になった方もいらっしゃるかもしれないが、ケルサン氏は穏やかな表情をした、スーツの似合うジェントルマンだった。

講演が始まり、まず出たのがチベット問題に対する日本への期待感。
「日本はアジアで非常に重要な国です。日本は完全な民主主義、自由、開かれた情報、モラルのある国であり、大きな役割を果たすことができます」

それから、チベットの歴史において「最も闇の時代」である中共侵略以来の60年におけるチベットの問題を語った後、
「なぜ中国政府はこのような政策を用いているのか。それはチベットに対する理解が無いことに起因します。また、(中国とは違う)ユニークなチベットの文化・言語・地理、そしてアイデンティティが脅威になることを恐れているから、抑圧を続けているのです。現在の状況は中国人の利にもチベット人の利にもなっていません」
と語る。

そして、中国共産党政府との交渉に携わってきたケルサン氏ならではのお話――交渉の様子に話が及ぶ。
ケルサン氏は独立を求めず、両者にとってメリットがあり同意できる中道のアプローチの姿勢を以て交渉に当たる。
亡命チベット人が帰省する、また亡命チベット人を家族に持つ本土のチベット人が亡命者と会うために海外に行くことを認めてください
ダライ・ラマ法王の写真を禁止することをやめてください
年に1度程度の対話の機会をもっと増やしてください
法王のチベット巡礼を許可してください
などのことを要求するが、視点・立場の違いから中国共産党政府はそれらをことごとく拒否する。

そして、2008年11月。
前回の会談で「『真の自治』ということを言うのならそれがどんなものか見せてみろ」と言われたことから、代表団はチベット人にどのようなニーズがあるか、中国の憲法の枠内で実現できるか、を考慮した上で草案をまとめ、提出した。
しかし、中国側は
草案のタイトルさえも容認できない。ダライにチベットのことを語る権利は無い!!
と一蹴。
「ならなぜ提出しろと言ったのですか?」
と尋ねると、
これはお前らの中国に対する態度のテストだ。お前らはテストに無残に落ちたのだ

――何という傲慢。
――何という不誠実。
完全に上からの目線、自分たちが絶対であるという姿勢で語っている。

「中国政府は最初の交渉の時から変わっていない。政治的な意志も、勇気も、問題を解決する気持ちもありません」
と、ケルサン氏は批判する。

それでも、ケルサン氏は法王譲りの?オプティミズムでこう語る。
私たちはこれからも中道のアプローチを支持します
常に非暴力の道で行くべきです」」
北京政府からゴーサインが出ればいつでもチベット問題に関して話し合う用意があります
政府レベルにとどまらず、違ったレベルでのコンタクト――例えば、チベット人と中国人の学者・専門家との交流、若いチベット人と若い中国人が一堂を会するフォーラムの開催、中国の仏教徒とチベットの仏教徒の交流、中国語の出版物・Webサイトの発行――等の方法もあります。チベットの若者は、中国語・中国文化を学んで直接コンタクトできるようになってください。そして、チベットの視点を相手に分からせてください。
チベット人の声だけでは足りません。国際社会の協力が必要です。日本を訪問したのも、チベット問題がアジアの政治的問題であることを知ってほしかったからです

講演終了後も、質疑応答で会場の熱気はやまない。
質疑応答の最後の方が語った。
チベット問題を(中国の)国内問題として理解してはいけない。国際問題であり、人道問題である。日本人はもっとチベット問題に関心を持たなければならない
この言葉で、講演会は締めくくられた。

実際に中国当局との交渉に挑んだケルサン氏の言葉には重みがあった。
ケルサン氏はアジアの有力国として日本に対して大きな期待を寄せている。如何に小さなことでもいい。その期待に応える努力を続けようではないか。

注:文中のケルサン氏の言葉は、通訳者の言葉をそのまま書いたものではありません。「自分だったらこう訳出する」という思いで書いた部分が少なからずあります。

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