バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

敦煌-3 ~敦煌故城と白馬塔

2002年7月21日

午前中、ドミトリーの他の住人たちは、私が昨日行った莫高窟へ揃って行ってしまった。何人か連れがいれば、車をチャーターして郊外の玉門関か陽関にでも行きたいところだが、1人で行く気にはなれない。レンタサイクルで近場を巡ることにした。

まずは敦煌故城(沙城)を目指したが、予想以上に街中に近く、予想以上にさり気なく建っていたため、まさかあれがそうだろうとは思わず、最初は行き過ごしてしまった。しばらくして気が付いて引き返したが、故城に着く前に敦煌公園なるものが目に入った。折角だから入ってみよう。
何があるかと期待して入ってみたものの、特に何の変哲もない公園だった。それでも金を払った分は楽しもうと散歩していると、後ろに人の気配を感じた。振り返ってみると、余り人相の良くない男が私の後ろを歩いている。
嫌な感じを覚えて、私は右に左にコースを変えてみた。すると、男も右に左にと付いてくる。急ぎ足で小山の階段を上ってみると、そいつも歩調を早めて階段を上って来るではないか。
(間違いない、追い剥ぎだ)
どう振り切ろうかと考えながら階段を上りきったところ、そこには見晴台があり、1組のカップルが腰をかけて語り合っていた。渡りに舟と言わんばかりに、私は彼らからそう遠くないところに腰を下ろした。すると案の定、追い剥ぎ野郎は私を追うのをやめて、小山を下りていった。
中国旅行を初めて11年、この類の身の危険を感じたのは初めてのことだ。異国の地の見知らぬ土地 ―― 色々な面で細心の注意が必要だ。
それはともかくとして、この高台は敦煌公園で最も訪れるに値する場所だ。遠くに目をやれば鳴沙山が、近くを見下ろすと敦煌故城が視界に飛び込んでくる。瓢箪から駒とでも言うのか、悪党から逃れてきた先で思いがけずいい風景を見ることができた。
敦煌故城
敦煌故城

さて、先程は気づかずに通過してしまった敦煌故城に、今度こそ入場する。
ここは入場券や入場料などがある訳ではなく、大通りから少し入った所にさらされるように、赤茶けた遺構が建っているばかりだった。古代敦煌の姿を彷彿とさせるのは確かだが、元はもっと大きかったはずだ。大きく破損しているのがよく分かる。
よく見ると、傍らにはごみが堆く積もっている。地元民には余り大切に扱われていないのだろうか。
敦煌史の生き証人は、どこか寂しげだ。
白馬塔
白馬塔

敦煌故城から更に奥に進み、白馬塔を訪れる。ここにはしっかりゲートと切符売場がある。入場料は15元。「15元か、高いなー!」そう言ったのは私ではなく、塔の服務員と世間話をしていた地元人だった。
この塔は、日本の高校世界史の教科書にも登場するインドの高僧・鳩摩羅什ゆかりのものだ。ここ敦煌で彼の経典を運んでいた白馬が死に、その墓標として造られたものらしい。傍らの壁には、その白馬にまつわるやや伝奇的な言い伝えが記されている。
決して悪くはない。しかし、その塔以外は何も無い所だ。先程地元の人が言っていた通り、これで15元はやや高い気がした。

敦煌の街ともこの日でお別れ。この日の夜の列車で、いよいよ東トルキスタンに向かう。
乗り合いタクシー(1人40元)で、来るときも通った砂漠の中の一本道を、またしても延々2時間かけて走り、柳園の敦煌駅に戻ってきた。
午後8時、列車は一路、東トルキスタン・ウルムチに向けて出発した。

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