バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ラダック、北インド(2011年)

ティクセ

2011年9月15日

今回最初に目指したティクセはレーから南東へ約20kmの場所にある。バスは途中で客を乗降させながらも1時間足らずで到着した。

ティクセでの目当ては、隣町を出てすぐに目に入ってくるランドマークであるティクセ・ゴンパだ。
正面からその姿を見た瞬間 ―― 一目惚れをしてしまった。チベット本土のポタラ宮と瓜二つなのだ。レー王宮も形はポタラ宮と似ているが、色がほぼ褐色のみである。それに対し、ティクセ・ゴンパは赤・白・黄色とポタラ宮とほぼ同じ配色で、ポタラ宮よりもむしろ色鮮やかなくらいだ。
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近くで朝食をとった後、早速上ってみる。
その途中、何か部屋のようなものがあったので入ってみると、教室が幾つか並んでいて、中には小僧さんたちがいる。学校だった。
「ここは入っちゃダメだよ!」
小僧さんに言われて入り口の貼り紙を見ると、確かに「ここは学校です。参観者の入場はご遠慮ください」と英語で書かれている。
おっと、これは失礼しました――と外に出たところ、小僧さんの1人が着いてきて「Photo!」と写真をねだってくる。聖職者の卵とはいえ、まだまだ子どもなんだな、とほほえましく思いながら写真を撮ってあげると、今度は「カメラを貸して」と言ってくる。貸してあげると、私の写真や周りの写真を撮り始める。
と、更に2人の小僧さんが出てきて、カメラの奪い合って互いの写真を撮り始めた。しかもバシャバシャと遠慮なく連写する始末である(デジタル一眼だったからよかったが、フィルムカメラだったらたまったものではなかった)。おまけに持ち方が危なっかしく、いつ落としてもおかしくなかったので私は下から必死でカメラを支えなければならなかった。

まさしく好奇心の塊だが、かのダライ・ラマ14世も幼少の頃には好奇心の塊で時計を分解したりなさっていたという。もしかしたらこういう好奇心が、偉大な高僧を産み出す要因となるのかもしれない。

満足した小僧さんたちからカメラを奪い返し、いよいよゴンパ内部へと入る。入場料30ルピー也。
本家ポタラ宮と比べれば部屋数こそ少ないものの、まずまず多くの部屋があり、それぞれに仏像やダライ・ラマ14世をはじめとした高僧の写真が安置されていた。
「ジュレー ※1
「ジュレー」
私は一つの部屋の前にいた僧侶に声をかけた。
「きれいなゴンパですね。ポタラ宮そっくりです」
「そうですね」
そんな話をしている間に、話題はそこに描かれていた壁画へと移った。
「この壁画は“The Cycle of Life”を表しています」
「“The Cycle of Life”――日本語では『輪廻』といいます」
「『リンネ』?」
「はい!」
今後、このお坊さんが日本人を相手にした時、「この壁画は『リンネ』を表しています」とか説明するかもしれない。
更に話題は、ゴンパから見下ろす景色へと移った。
「あそこに川が流れているでしょう? あれはチベットから流れ出ているインダス川です」
「そうですか――それにしても、川の近くと遠くとで色が全然違いますね」
そう。インダス川のほとりは緑が生い茂っているのだが、ある一線を境にして突然、ラダックの大地は荒涼とした褐色の砂漠へと姿を変えているのだ。
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その水と緑の風景は、さながらオアシスである――否、“さながら”ではない。
インダスの川の流れはまさしく、乾燥したラダックにとって「オアシス」そのものなのだ。

ゴンパの中を右回りに「コルラ」する形で、仏様に祈りを捧げつつ部屋という部屋を回り、いよいよ最後の大部屋を残すのみとなった。
「うわ…」
中を覗いた瞬間、嘆声が口をついて出た。
そこには、下の階から床を突き出て肩から上を見せている金色の大仏(チャンパ大仏、弥勒大仏)の姿があったのだ。
高さは実に15m。このゴンパで見てきた全ての仏像の印象をかき消してしまうかの存在感だった。もはや、それらの仏像に対してやってきたのと同じ祈り方では全く足りなかった。私は、チベット仏教に関心がありながら普段は殆どやらない五体投地 ※2 を、その大仏の前で2度、3度と繰り返していた。
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兎にも角にも、素晴らしいゴンパだった。これまでのところ、ラダックで訪れたゴンパの中では最高のインパクトを受けたが、チベット本土で訪れたゴンパを含めても5本の指に入るのではないだろうか。
今後、ラダックで幾つものゴンパを見ることになろうが、ティクセ・ゴンパと比べてもの足りなさばかり感じてしまわないか、少々心配だ。


※1 ジュレー…ラダックの言葉で「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」等、いろいろな意味で使われるあいさつの言葉。
※2 五体投地…合掌した手を頭上から3段階で下ろした後、地面に体をひれ伏す方式の祈り。

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