バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

モロッコ

マラケシュ-1 ~眠らないジャマ・エル・フナ広場

2013年10月26日

マラケシュ駅からメディナ(旧市街)までは歩いても30分程度。夜とはいえまだそんなに遅い時間でもないし、市バスの乗り場もよく分からなかったので、私は歩いてメディナを目指すことにした。
なるほど、30分ほど歩くとメディナ入り口のシンボルタワーであるクトゥビーヤ・モスクのミナレットが見えてきた。そこからジャマ・エル・フナ広場に歩くと、とてつもない人ごみに遭遇する。
人、人、人のアグノウ門通り
人、人、人のアグノウ門通り
しかし、今はその人ごみの理由よりも、この日の過ごす場所だ。広場からそのまま人ごみを引き継いでいるアグノウ門通りから安宿の集まる路地裏に入って、まずは突き当たりの分かりやすい場所にあるオテル・ド・ラペに行ってみた。しかしここではシングルルームが空いていなかったので、もう少し奥にある宿に案内された。このあたりはシングルルーム70DHが相場らしく、どこへ行っても条件は同じようだったのでここに決めたが、後になってからこの宿ではWifiが利用できないということが分かった。向かいのオテル・イムーザはWifiが使えるようなので、明日はこちらに移ることにしよう。
そしてこの後、私は宿を決める際には必ずWifiが使えるかどうかを確認するようになった。

バックパックを宿の部屋に下ろしたところで、本格的に夜のマラケシュ巡りへと出かける。
迷路のようなマラケシュの路地裏
迷路のようなマラケシュの路地裏
宿のある界隈の奥を少し覗いてみた。マラケシュをはじめ、モロッコの路地裏は迷路のようだ、ということは旅の前から聞かされていたが、吸い込まれそうな奥行きが感じられ、確かに「迷路」かもしれないな、と感じられた。しかし――この後、私はこのあたりの路地裏などまだ序の口にも入らなかったのだ、ということを思い知ることになる。

再び人が溢れんばかりのアグノウ門通りに出る。
腹が減った――そう言えば、モロッコについてからまだ水やコーラぐらいしか口にしていない。通り沿いにあるケバブの店でケバブサンドとフライドポテトのセットを買い、モロッコ第1食にようやくありつくことができた。これで10DHなのだから、ここモロッコでも安上がりな旅行ができそうだ――と、この時はまだ思っていた。

大道芸などで賑わうジャマ・エル・フナ広場
大道芸などで賑わうジャマ・エル・フナ広場
ジャマ・エル・フナ広場の屋台
屋台もジャマ・エル・フナ広場の醍醐味

さて、いよいよ夜のマラケシュの主役・ジャマ・エル・フナ広場である。先ほど通りかかっただけでもその熱気は伝わってきたが、実際にその中に身を置いてみるとその濃厚な熱気に息が詰まりそうにすらなる。

まず目に入ってくるのが、大音響の中、大道芸をする人々と、それを取り囲んでいる観衆たちである。そしてその向こうでは屋台が並び、旅行者らの胃袋を満たしている。いずれも、どの国で見た大道芸よりも、どの国で訪れた屋台よりも、熱い。モロッコのすぐ南に広がる灼熱のサハラがそうさせているのだろうか。
「ボンジュール!(モロッコでは英語よりもフランス語がよく通じる)食べていかない?」
陽気な呼び掛けに若干食指を動かされもしたが、ついさっきケバブサンドを食べたばかりだ。
オレンジジュース
このオレンジジュースが美味しかった
それでも屋台の味を楽しみたかった私は、生搾りのオレンジジュースのスタンドに足を向けた。
グラスに注がれた搾りたてのジュースを口にすると――濃厚な柑橘の味と香りが口の中に広がってくる。オレンジだけではなくグレープフルーツも少し混じっているのか、あのちょっと甘酸っぱいような苦いような風味も感じられる。先ほどの大道芸や屋台ではサハラの熱さのようなものが感じられたが、一方このオレンジジュースには地中海の爽やかさのようなものが感じられる。
それが、モロッコなのだ。

大道芸の奥に屋台、そしてその更に奥にあるのが、スークである。このスークこそが、マラケシュを“迷宮都市”たらしめているマラケシュの主役だ。
このスークを「歩く」と言うよりは「あてもなくさ迷う」ことこそマラケシュの醍醐味である。とはいえ、もう夜も遅い。今から奥へ奥へと入ってしまってはいつ抜け出せるか分かったものではないのでこの日は入ってすぐの場所を少しうろつくだけにとどめた。
マラケシュのスーク
異国情緒豊かなスーク
それでも現代モロッコ人の生活スタイルが垣間見えるし、エキゾチックな伝統色が濃厚に見えてくる場所もあったりと、入り口近くだけでも十分にモロッコを感じることはできる。

時差ボケを早いうちに解消するためにも規則正しい寝起きが必要だったので、この日は10時ぐらいで切り上げて宿に戻った。しかし、背後でなおも響いているジャマ・エル・フナ広場の喧騒は、熱さが引いて眠る気配を全く感じさせない。

※当時のレート:1DH≒12.5円

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