バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

モロッコ

サハラ砂漠-1 ~ラクダに乗って砂丘を進む

2013年10月29日

私たちを背に乗せたラクダの隊列が、サハラの一角にあるメルズーガの大砂丘(またの名を『シェビ大砂丘』)という荒野へゆったりと進み入る。
ラクダに乗ってサハラを進む
ラクダに乗ってサハラを進む
本当にゆったりとしていて、ともすればラクダを下りて歩いた方が速かったりもするのだが、砂地を歩くという行為は思いの外エネルギーを消費する。たまに下りてみるぐらいだったらいいかもしれないが、ここは砂漠を歩くことに適した進化をしているラクダの力を借りるのが賢明だろう。
途中、四駆の自動車で砂漠を走っている一団に遭遇した。こういう砂漠の楽しみ方もあるのだろうが、この大自然を堪能するにはやはり、自然に寄り添ったラクダでの移動の方がふさわしい。
よくよく考えてみれば、本来生きるものを寄せ付けぬ域に踏み込もうというのだから、短い行程とはいえ結構なチャレンジである。
サハラ砂漠の風紋
風紋が美しい
そして、人を寄せ付けぬ不毛の大地であるにもかかわらず、これだけ人の目を楽しませてくれる美しい風景を織り成しているというのが面白い。遠目に見た時から感じていたのだが、この砂丘の大地はビロードのようにきめが細かいのだ。
背後に建ち並ぶ宿が見えなくなると、周りは360度、目の細かい赤茶けた砂の世界だ。吹けば簡単に飛んでしまう砂が堆積してできた様々な形の山――その斜面は時には滑らかであり、時には風紋が刻まれていたりもする。その姿は、砂と風とが織り成すアートと言っていい。

そうかと思えば、一方では砂と光の織り成すアートも展開されている。砂丘の西から東へと向かっている私たちの背後から西日が差し、歩いている向きによってはラクダの隊列のシルエットがきれいに砂の上に映し出される。
やがて、夕日が傾いてきた西の空がほんのり赤く染まる。砂漠も夕日に染められ、たたでさえ赤茶けているのがより一層、鮮やかに赤みを帯びてくる。

夕日に染まるサハラ
夕日に染まるサハラ

日が落ちて辺りはすっかり暗くなってしまい、これ以上灯り無しで砂漠を進むのはちょっと無理なのではないか、と感じ始めたちょうどそのタイミングで、隊列はベルベル人のテントサイトに到着した。この日はここで夜を明かすことになる。
砂漠のど真ん中なので、勿論電気もガスも通っていない。灯りは手持ちの懐中電灯が頼みだ。まさに「自然に帰った」的な環境の下、幸いにも無風状態で砂が舞うようなことも無かったので、皆テント村の広場に出て砂漠の大地に抱かれながら夕食をとり、談笑し、太鼓とボーカルだけのシンプルな構成でのベルベル人の伝統音楽演奏に耳を傾ける。

ベルベル人の伝統音楽演奏
ベルベル人の伝統音楽演奏(↓音声あり)
サハラ砂漠の満天の星空
満天の星空

そして空を見上げると、2007年にパキスタンのフンザで見た星空には及ばないものの、都会ではおよそ考えられない満天の星空で、流れ星も3つばかり見えた。アフリカの大地と大空に抱かれて、心を開放する。

それにしても、砂漠の夜は想像していた通りの寒さだった。ラクダに乗るための荷物制限で寝袋を置いてきてしまったのがやはり痛い。テントに備え付けられていた毛布を2枚重ねて、何とか砂漠での1泊を過ごす。

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