バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

西安 ~シルクロードの出発点

2002年7月14日

北京から西安に列車で向かう場合、特快(特急)に乗れば12時間足らずで到着してしまう。しかし、私は特快の切符を手に入れることができず、乗ったのは便ナンバーの頭に“L”が付く、臨時列車だった。臨時列車は、通常の列車に影響を及ぼさないよう、ダイヤの隙間を縫って運行される。駅での停車以外にも、あちこちで臨時停車し、他の列車の通過待ちをする。そんな具合だから、遅いこと極まりない。

西安に近づいたところで、泥地で大がかりな土木工事が行われていた。周囲の中国人の話を聞くまでもない。最近、この近辺で発生した、大洪水の爪跡である。治水こそが為政者の重大な使命、という人類の歴史は、今も続いているのかもしれない。ともあれ、この災害で犠牲になった人々の冥福を祈るばかりだ。

前日の22時30分に北京西駅を出発した列車がようやく西安に到着したのは、22時間後。空もすっかり暗くなってしまった20時半すぎだった。
西安でも北京同様、ユースホステルに宿泊する予定だった。しかし、西安のユースホステルは駅から遠く、時間が時間だけに、行くのが少々面倒に思えてきた。と、駅前歩いていると、こんな電光掲示が目に飛び込んできた。

解放飯店 標準房(スタンダードルーム)120元

[大して高いうちに入らない。もうここにしよう]
私はそのまま、3ツ星ホテルの解放飯店に吸い込まれていった。
結局、今回の旅で個室に泊まったのはここだけ。120元というお手頃値段であるにも関わらず、今回の旅で一番高い宿泊費となった。

7月15日

西安の次は、甘粛省嘉峪関を訪れる予定だ。この日朝、翌日午前の嘉峪関に向かう列車のチケットを西安駅で入手。その後、かの兵馬俑を訪れるため、西安駅前でツアーバスに乗り込んだ。
まず、咸陽博物館、華清池に立ち寄ったが、兵馬俑ほど見たいと思わなかったので入場はしなかった。今回兵馬俑以外に入場したのは、明聖宮と秦陵地宮だ。
明聖宮は、華清池近くの山の中腹に張り付くように建っている、中国を代表する道観だ。信心深い中国人にとってはまさしく必見の地であろうが、私にとっては、ただ建っている場所がユニークだというだけの普通の寺院だ。
秦陵地宮は、始皇帝陵の地下を一部再現し、さらに陵の全体像をミニチュアで再現している。普通に秦始皇陵を登るだけでは決して実感できない、中国初の大権力者・始皇帝の始皇帝たる所以を、ここでは窺うことができる。
秦陵地宮を参観し終わったところで、ツアーバスは続いて秦始皇陵に向かう。
しかし、そんなに見るべきものがある訳でもない。ここでツアーを離れて直接兵馬俑に行けば、西安市内を少し回ることもできる。私は添乗員にその旨を告げ、一人兵馬俑へと向かった。
兵馬俑
兵馬俑

入ってまず感じたことは「広い!」ということ。実際には等身大の兵馬俑が、まるで小さな人形のように見える。そしてその数も、半端ではない。そして、その保存状態の良さ(とはいえ、出土した瞬間に鮮やかな色が損なわれたそうだが)にも驚かされる。
しかし、死んでも護衛をつけようというあたり、始皇帝という人も意外と気が小さかったのかもしれない。

西安市内に戻り、碑林を訪れる。中国の歴史的な石碑を一堂に集めた博物館だ。
大秦景教流行中国碑
大秦景教流行中国碑
日本の世界史の教科書にも写真付きで紹介されている、大秦景教流行中国碑や、孔子らの著作を刻んだ石碑が所狭しと並んでいるほか、石碑の拓本づくりの実演も行われている。(マニアックな)中国古代史ファンにとっては、垂涎の場所と言ってもいいかもしれない。
展示室の入り口近くに、展示品の拓本を展示販売している売店があった。団体で来ていた日本の1人が売店の女性と話している。
「(日本語で)幾らですか?」
すると店員は、やはり日本語で、
「1万2千円」
と返していた。
(また、外国人と見てぼったくっているな)
そう思った私は、試しに中国語で「這本書多少銭(この本幾ら)?」と尋ねた。すると「800元」との答え。やはり大体、1万2千円だ。私が外国人であることを見抜いたのか、あるいは、先程の日本人に告げ口されるのを恐れていたのか、あるいはやはり、それが適正価格だったのだろうか。
絲綢之路起点群像
絲綢之路起点群像

城域から少し西に行ったところに、ラクダや商人が隊列をなしている石像がある。
絲綢之路起点群像
「絲綢之路」とは中国語の「絹の道=シルクロード」のこと ―― そう、ここはかつて、西域へ向かう商隊の出発点だった開遠門があった地、即ち、まさしくシルクロードの起点だった地だ。
私も明日、かつてのシルクロードをたどって甘粛省に向かう。西域の思いを、ここで新たにした。

<新着記事>

Google

WWWを検索a-daichi.comを検索
お勧めメディア(Amazon)
チベットの大地へ