バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

東トルキスタン、大陸中国西北

トルファン-2 ~トルファン博物館と本場のシシカバブ

2002年7月23日

トルファン初日は街巡りに充てることにしていたが、ここは先日までいた中国・敦煌同様、街そのものは小さく、名所と言える場所は極めて少ない。唯一と言っていい場所が、トルファン飯店のすぐ北にあるトルファン博物館だ。
この博物館では、まず1階で恐竜と文物の展示が行われている。ここトルファンは、恐竜の化石が多く発掘されたタクラマカン砂漠に隣接する街だ。それだけに恐竜の展示があるのは納得できるが、展示そのものは特に目新しさもない。文物展示の方では、古代トルファンを偲ばせる遺物が数多く並んでいる。説明文に目を通してみると「高昌」「車師」という国名があちこちで目に付く。高校の世界史の教科書でも見た覚えのある名前だが、当時はどれがどこにあったのかさっぱり理解できなかった。
[そうか、高昌や車師はこの一帯に栄えたのだな]
やはり机上だけの学習は駄目だ。フィールドワークに勝るものは無い。
2階に上がると、展示室は1つだけだった。その中には、ミイラがずらりと並んでいる。故人の生前の姿を想起し、当時の世の中に思いを馳せる ―― などというロマンチックな雰囲気ではない。グロテスクさの方が先立った。

トルファンの見どころは郊外に集中している。それらを効率よく見て回れるのが、トルファン賓館発着の一日ツアーだ。私も翌日参加すべく、同ホテルに出向いて申し込んだ。
申し込みを終えてホテルの外に出ると、ちょうどその日のツアーが戻ってきたようだ。豪華バスから大勢の観光客が降りてくる。
[私も明日は、あのバスに乗って火焔山を、高昌故城を巡るのかな?]
期待感がふつふつと湧いてきた。

両替をしようとして銀行に出向く。しかし、先に来ていた中国人の客が銀行員と何やらもめている。どうやら、両替しようとしていた100ドル札が偽札だったらしい。
私自身は幸い、こうしたトラブルに見舞われたことは無いが、中国・大連で留学中、1人の友人が偽の100元札を握らされていたことを知って地団駄を踏んだ現場を、目の当たりにしたことがある。自分が甘い汁を吸うために他人の迷惑を省みない輩の罠は、本当にどこに潜んでいるのか分かったものではない。

簡単に食事を済ませてホテルのドミトリーに戻ると、チェックインした時には留守だった同室の若い女性が戻ってきていた。
「敦煌でお会いしましたよね?」
「え、どこで?」。私は人の顔を覚えるのが苦手である。
「yingyingカフェで」「ああ!」
外国人旅行者のたどるルート、泊まるホテルは、実に似たり寄ったりだ。

やがて、もう1人の同室の40代ほどの男性も戻ってきた。しばらく話をした後、中庭のビアガーデンでシシカバブを肴にビールでも、という話になった。女性の方は独自の予定があるようだったので、男2人で一杯引っかけに表に出た。
シシカバブ
本場のシシカバブ
東トルキスタンのウイグル人はイスラム教徒が多く、ご存じのように、イスラム教では豚肉を食することが戒律で禁じられており、肉といえば羊肉だ。漢語で羊肉串と呼ばれるシシカバブは、ウイグルの羊肉料理の代表だ。焼き鳥のように串に連なったこま切れの羊肉を、塩やスパイスで味付けしながら炭火であぶる、シンプルだがイスラムの味わいの深い料理だ。ただし羊肉は食中りしやすいので、生焼けのまま食べるのは禁物だ。私が当時住んでいた大連など中国でも食べることはできるが、やはり本場の味を味わってみたい。
ブドウ棚に囲まれたビアガーデンの席に着いてメニューを見ると、シシカバブ1本5元 ―― 中国では、大連では1本1元、その他安い所では0.5元程度なのを考えると、かなり高い。しかし、出てきたものを見て納得した。肉の塊はボリュームがあり、串も上等なものを使っている。
一口かじってみると、本場のシシカバブは肉汁が多く、肉厚・弾力があって、中国で食べていた硬めのシシカバブとは一味違う。余りに軟らかだったので、生焼けなのではないかと心配した位だ。味も、塩とスパイスがよく効いている。一緒に注文した地ビールとの相性も抜群だ。
東トルキスタンの夜が、シシカバブとビールの味と、ウイグルの音楽でにぎやかに、味わい深く更けていった。

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