バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

中国・承徳、北京

外八廟 ~東のチベット寺院

2003年8月10日

ホテルで脚の疲れを少し回復させた後、外八廟巡りに出る。
外八廟というのは、18世紀に承徳市内に建てられた、8軒のチベット仏教寺院の総称である。
このような東の地にチベット仏教寺院――モンゴルでは古来からチベット人と親交があったことから、現在に至るまでチベット仏教が大切にされているのだ。
外八廟は大きく分けて、避暑山荘東エリアと、北エリアの2つがある。この2エリアは、地図上では近くに見えるが、川に隔てられており、しかもその川に掛かっている橋が極端に少ないため、交通の便が悪く、全部見ようと思うと丸一日かかってしまう。(バスに乗る際『外八廟に行くか?』と運転手に聞いたところ『外八廟のどこに行くんだい?』と聞き返された)。時間的に全部見るのはきつかった私は、北エリアに絞って訪れることにした。
須弥福寿之廟
須弥福寿之廟
北へ向かうバスが橋にさしかかると、須弥福寿之廟普陀宗乗之廟が、橋の向こうの左手に見えてくる。ここでバスを降りて、須弥福寿之廟に向かって歩く。
須弥福寿之廟は、満洲清朝の乾隆帝の還暦祝いにチベットから訪れたパンチェン・ラマ6世を迎えるために建てられた寺院だ。チベット・シガツェのタシルンポ寺を模したものらしい。
須弥福寿之廟から西へ少し歩くと、今度は普陀宗乗之廟。こちらのモデルは言われずとも一目で分かる。ラサのポタラ宮だ。本場のものほど入り組んだ構造にはなっていないが、外八廟の総面積の半分を占めるというだけあって、歩き応えがある。
普陀宗乗之廟
普陀宗乗之廟(ポタラ宮ではない)
内装も、チベット寺院らしい鮮やかな彩色と神秘的な雰囲気に満ちているが、この寺院は高台から見下ろした全体図が有名である。さて、そんな高台はあるのか――と見回したところ、あった。小高い丘の上に、城壁が。
おや? あれは先程訪れたばかりの避暑山荘の城壁ではないか。しかも、あそこは私が歩いていない山間区の北端――そうか、普陀宗乗之廟の全体図はあそこから見下ろすべきだったか。しかし、先程の疲れ具合を考えると、あそこまで行くのはやはりきつかっただろう。普陀宗乗之廟の全景を見るためだけに再入場するのも馬鹿馬鹿しいので、あっさりと諦めた。
上記の2つの寺院からやや離れた場所に普寧寺がある。ここの建築物もなかなか見応えがあり、やや夢中になって外観の写真を撮り続けていた。
普寧寺
普寧寺
そして、普寧寺の境内を離れるが――何か忘れている気がする。後になってから気づいたのだが、この寺のメーン・大雄宝殿には、世界最大の木彫観音像があるらしい。しかし、それを見ないまま境内を後にしていたのだった。
外八廟にはこの他に、溥仁寺・普佑寺・安遠廟・普楽寺・殊像寺があるが、時間的にも、(暑さゆえに)体力的にも限界があった。それに、この3つを見ただけでも、十分にチベット仏教の雰囲気を味わうことができた。外八廟参観はここで打ち切ることにしよう。
承徳という中国東部エリアで目にしたチベット仏教の光景は、私にラサでの思い出を再現させると同時に「もう一度本場のチベット、特にシガツェ等のラサ以外の街へ行きたい」という気持ちを湧き立たせていた。

後日談
その念願は、4年後のアジア周遊の旅で実現されることになる。

しかし、バスに乗って市街地に戻ると、そこはもう9割以上漢民族一色の街―― チベットに行ったかのような気分は“一炊の夢”だった。

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