バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

ラダック、北インド(2011年)

ストクの農村生活

2011年9月16日

ちょっとレーの街中から離れて南に約15kmにある、インダス川西側の村・ストクへ赴く。ここで1泊して農村生活を垣間見るプランに参加したのである。

時計の針を9月12日に戻す。
朝食を買いにレーのジャーマン・ベーカリーを訪れた時のことだ。こんな貼り紙が目に入った。

伝統的古民家「にゃむしゃんの館」
日本人の皆様、レーの街の喧騒を離れ、静かな農村を満喫しませんか?  動物、素朴な人々、大自然があなたを待っています。

今回のラダック訪問で、農村訪問はぜひ実現させたいところだったが、どうすればいいのかが分からない状況だった。そんな私にとって、このプランは願ってもない好機だった。
早速、貼り紙に書かれていた「にゃむしゃんの館」経営者の日本人女性エツコさんにメールで連絡を取り、本日の訪問となった次第である。

時計の針を元に戻そう。

レーからストクへはバスで約1時間 。僅か15kmの距離だが、途中満員状態で田舎道を通るものだから、そのくらいかかってしまう。
知っていないとそれとは分からないトレッキングスタート地点の発着点に到着すると、エツコさんが出迎えにきてくれていた。小道を少し上ったところにある「にゃむしゃんの館」に案内された。

少し休憩をした後、まずは家の中を案内してもらう。最近になって一部修理されたとはいうものの、古き良きラダックの家屋の伝統をしっかりと引き継いでいる。
台所では、牛やゾ(ヤクと普通の牛とを交配させた牛の仲間)の糞を主な燃料として、鍋などを熱するばかりではなく、冷めたものを温め直したり洗濯物を放り込んで乾かしたりもできる機能的なかまど、バターを攪拌するための桶などを紹介してもらう。
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家屋の主な建築材は日干し煉瓦である。この日干し煉瓦、壊れたものは水で戻して煉瓦の間を埋めるセメント役として再利用できるという。天井は、間隔を空けて渡されたポプラの梁(縁起をかついで必ず奇数本)の上に柳(日本でイメージされるしだれ柳とは逆に、枝が上を向いている)の枝を隙間なく敷き詰めて造られている。使われなくなった家屋の建材を再利用するなど、全てに無駄が無い。

人が生活する場は建物の2階から上。1階は家畜小屋になっているのが一般的だ。というのは、家畜の糞が発する熱が階上に上昇することで天然の暖房になるのだという。

表に出て、大麦畑を案内してもらう。畑は緩やかな斜面になっているが、水路から導いた水は下から上に流れるように誘導されるという。
「今はもう大麦の収穫が終わってしまいましたが、ゴールデンウィークあたりに来たら歌を歌いながら種植えをする光景を見ることができますよ」
とエツコさん。なるほど、農村を訪れるにも適した時期があるということだ。この次にはぜひ、その時期を狙って行きたいものだ。

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近所の畑で刈り取られた大麦

その後、家から足を延ばして表に出てみる。
まず、山の中腹に案内される。ゴンパのような建物が建っているが、これはこの近辺の集落のコミュニティセンター的な施設だという。近くには精霊を祀ってあるという塚もある。
「写真を撮りに山に登ってみませんか?」
エツコさんが言う。インダス川の向こう側には、昨夜の大雨が山では雪となったのか、昨日よりも雪を頂いた山が増えたようにも思われる。しかし、生憎の曇り空で雪山はその頂を覆い隠されており、今山の上に登っても余りいい被写体にはならないように思われたので、わざわざ体力を消耗するようなことはやめておいた。

その近くにあるチョルテン内部に入ってみると、11世紀前後のものといわれる仏画が壁一面に描かれていた。拝観料も何も無しでこれだけのものを見られるというのはなかなかの穴場だ。ちょっと得をした気分である。

更に村落から離れると、荒涼とした砂漠地帯に入った。夜になると凶暴化して家畜を襲ったりすることもある“ラダックのギャング”野犬や、僅かな牧草地帯で放牧されているゾの群れを見ることもできる。
「塚が見えますよね ―― あれ、お墓です」
確かに、まばらではあるが幾つかの塚を見ることができる。縦長のものや横長のものがあるが、縦長のものは以前遺体を座らせた状態で火葬したもの、横長のものは最近になって遺体を横たえて火葬するようになった後のものだという。
(ちなみに、チベット本土で今なお行われている鳥葬は、ラダックでは全く行われていないという)
近くにある水場には、牛やゾの白骨が転がっていた。こちらは家畜の墓場となっているようである。

「チョグラムサルの向こうを見て下さい。建物が全く無い場所があるのが分かりますか?」
インダス川の向こうを指差しながら、エツコさんが言う。
「昨年の洪水で、あのあたりの家が全部流されてしまったんです・・・」
のどかな場所とはいえ、やはり自然環境の厳しさがラダックの現実。その自然環境と共存し、時には闘いながら、人々は生きているのである。

夕方からはエツコさんの夫・ワンボさんのご家族の家へ行って牛の乳搾りやニンジン・リンゴ等の収穫の様子を見せていただいたほか、細長い筒を使ったバター茶作りの実演も見せていただいた。なお、ここの家で買われているゾは角が立派で、この家の「家宝」と言っても差し支えないかもしれない。
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にゃむしゃんの館に戻り、午後8時から夕食。小麦やジャガイモをふんだんに使ったラダックの家庭料理「スキュー」を頂く。

それから就寝までは、エツコさんたちとラダックの旅やチベットのことについて話に花が咲く。エツコさんはチベット文化がラサよりも残っているアムドやカムに、ワンボさんは巡礼のためにラサに行くのが夢だという。
「チベットの大地へ」を1冊お買い上げ頂いた。これでまた、お2人のチベット行き願望にまた火がつくか(笑)。

※ ちなみに2011年現在、ストクへのバスは観光名所のストク・ゴンパやストク・カルには行かなくなっている。

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