バス憧れの大地へ

日本100名城

100名城探訪記

東北・西北海道100名城(8)―上之国勝山館

2023年5月4日

6時19分、朝一番のバスで木古内駅を出発。北へと針路をとる。
1時間15分ほど経ったところで、大留バス停で下車。木古内と同じ海辺のエリアだが、木古内の海は津軽海峡、ここは江差に近い上ノ国町で海は日本海だ。道南の渡島半島をイタリア同様に長靴に見立てると、足の裏から足の甲に移動してきた格好になる。
大留から目指す城の登城口がある上国寺までは2㎞――歩いても30分もかからない距離だ。
城だけ行っても帰りのバスまで時間が余り過ぎるので、ついでに近くの名所を訪れることにした。
神の道
神の道
上国寺からもう1㎞弱西へ進んだところに「道の駅 上ノ国もんじゅ」がある。その裏手に断崖の下へと歩く岩場の遊歩道があり、その途中に海から階段が出ているように浸食された岩を見ることができる。「神の道」と呼ばれる岩であり、海の神「龍神」が太平山の山の女神に逢いに「龍燈」となってここを通っていくという伝説があるそうだ。

寄り道を終わらせて、先程来た道を上国寺まで戻る。
ここの右手から延びている坂道を、途中で荒神堂跡などの遺構を見つつ5分程度上ったところで、空堀に架かる橋の向こうに、柵で囲まれた上之国勝山館(続100名城 No.102)が見えてきた。
上之国勝山館は15世紀後半、後の松前氏の祖である武田(蠣崎)信広が日本海に面する夷王山の上に築城して蠣崎氏の政治・軍事・交易における本拠とした城だ。アイヌの攻撃に備える意味もあったという。 上之国勝山館
上之国勝山館
堀に架けられた橋を渡り、柵に囲まれた本曲輪の内部に入る。本曲輪全体が山肌に沿って緩やかな傾斜になっていて、振り返ると麓の陸地や、日本海を望むことができる。本曲輪の真ん中を貫く道の両側には当時の建物跡が再現されている。建物の復元は無いが、そこは想像力を働かせてみる。 建物跡が再現された勝山館の曲輪
建物跡が再現された勝山館の曲輪
更に上へと足を進めると、館神八幡宮跡の先にまた柵があり、柵を出るとまた空堀が立ち塞がり、橋が向こうへと架けられている。ここが本曲輪の末端・「搦め手の守り」である。 勝山館の館神八幡宮跡
勝山館の館神八幡宮跡
勝山館の搦め手の守り
勝山館の搦め手の守り
搦め手の守りで一旦下り坂になるが、やがてまた上り坂になった。この一帯では、無数の柱標が地面に刺さっているのを見ることができる。ここは「夷王山墳墓群」と呼ばれる、当時の墓場だ。柱標は元からの墓標ではなく発掘後に設置された「目印」だが、ここは墓標と思うことにしよう。
説明盤によると、この陵墓群には仏教様式と思われるもののほか、アイヌ様式の墳墓も見られるという。 夷王山墳墓群
夷王山墳墓群
陵墓群の上にバラック小屋があった。続100名城スタンプの設置場所でもある勝山館跡ガイダンス施設である。到着したのは9時45分ごろで開場時間の10時にはまだ間があったが、オープンの準備ができたのか、時間前に「どうぞ」と迎え入れてくれた。
スタンプを頂いて、館内を見学。勝山館の解説のほか、当時の想像図を再現したジオラマもあり、先程遺跡を歩きながら巡らせた想像の補填をしてくれた。 勝山館跡ガイダンス施設の、勝山館ジオラマ
勝山館跡ガイダンス施設の、勝山館ジオラマ
勝山館跡ガイダンス施設床下の墳墓
勝山館跡ガイダンス施設床下の墳墓
一部床下には、表で見た夷王山墳墓群の一部をガラスの下に見ることができる。再現でも移設でもなく、実際にこの施設の下にこの墳墓があるのだという。
展示を見ていると「勝山館とアイヌ」という説明文があった。それによると、この城跡からはアイヌのものと共通する骨角器や祭具が出土したという。夷王山墳墓群にアイヌ様式のものがあったことからも分かるように「アイヌの攻撃に対抗して築かれたはずの勝山館の中にアイヌがいたことは動かしがたく」(展示の説明文より抜粋)ということだったようだ。

ガイダンス施設の参観を終えて、上ってきた道を再びあちこち眺めながら、下山する。
先程のガイダンス施設で初めて知ったのだが、史跡上之国館跡にはこの勝山館のほか、天の川近くの花沢館、江差方面に少し進んだ海近くの洲崎館と2つの城跡がある。私はバスの時間が迫っていたので入り口までしか訪れられなかったが、時間があったら併せてじっくり巡りたい。 花沢館
花沢館
洲崎館
洲崎館
11時12分大留発のバスで木古内に戻り、20分にも満たない乗り継ぎ時間で、昨日ここまで乗って来た道南いさりび鉄道で12時51分、再び函館へと向かう。
今回の旅も終わりが近づいてきている。

アルファポリス

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