バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

大陸中国・重慶―三峡―赤壁

重慶港第18碼頭 ~遠い三峡

2000年9月23日

大足から再びバスで重慶に戻り、駅ビル内にあるファストフード式の食堂で夕食をとった。選んだメニューは、炒飯、焼き豚、そして、麻辣ラーメン。今でこそ直轄市になっているが、重慶はやはり四川。ここに来て麻辣系の激辛物を食べない手はないだろう。
麻辣ラーメン
重慶で食べた「麻辣ラーメン」
出てきたラーメンは、いかにも唐辛子たっぷりで「辛いです」という色をしている。赤いというよりもむしろ、どす黒い。口にしてみると、やはり強烈な辛さだ。とは言え、私は日本でも日頃、激辛ラーメンは食べ慣れていたし、自宅でも麻婆豆腐などを作る際は、豆板醤と刻み唐辛子と山椒をたっぷり入れている。7年前に西安で麻婆豆腐を食べた時よりは慣れたせいか、この辛さもそう苦にはならなかった。

手荷物預かり所で預けておいたバックパックを受け取り、私は重慶港第18碼頭(埠頭)へと向かうために、タクシーに乗り込んだ。
三峡下りの船の予約証明書は無くしたものの、幸いなことに出港予定の埠頭番号は覚えていたのだ。ただし、出発前に日本の旅行社の所長氏から「当日になって出発埠頭が変わるかもしれないので、必ず現地の旅行社の李さん(日本語が分かる)に確認の電話を入れておいて下さい」と言われている。その李さんの連絡先が書かれた名刺も、予約証明書と一緒に無くしてしまっている。フルネームも、旅行社の名前も、覚えていない。
[埠頭が変わっていなかったら、もしかしたら・・・]
まさに、祈るような思いだった。

道中、タクシーの運転手が「三峡下りの船に乗るのか?」と尋ねてくる。私が「そうだ」と言うと、車を止めて「チケットを見せてみろ」と言う。
昨日の今日で、タクシーの運転手に不信感を抱いていた私は、ムッとなって
「何でお前に見せなきゃいけないんだ。それよりさっさと埠頭に行け!」
と、先を急がせた。
埠頭に着くと、私はカウンターの服務員に「昭君号はここか」と尋ねた。しかし ―― 危惧していた通り、埠頭は変わっていた。こうなったら最後の望みは、「日本語が分かる李さん」と連絡を取ることにしかない。
服務員にそのことを話すと、どうやら該当する人物に心当たりがあるらしい。そこに電話をかけてもらうと、受話器の向こうから女性の声が聞こえてきた。
[あれ、よく覚えてないけれど、確か男性のような名前だった気が・・・]
話をしてみると、どうも要領を得ない。どうやら李さん違いのようだ。結局、昭君号の情報は得られず、私は予定の船をあきらめざるを得なかった。

私は埠頭を立ち去ることになったが、私の側に先程のタクシーの運転手がずっといたのが気になっていた。運転手は私に「車に乗れ」と言ってくる。車を見ると ―― メーターが倒したままになっているではないか。
[また頼んでもいないことを!]
予定の船に乗れなかった無念さもあって、ぶち切れそうになったが、ここはこのタクシーを利用することにした。私は、船着き場近くにある三峡賓館に行くよう運転手に告げた。
しばらくすると運転手はタクシーを止め、私に降りるよう促した。しかし、どう見てもホテルではない。そこは、船の切符を扱っている旅行社だった。
なぜこうも頼まれもしないことばかりするのだろうか。もしかしたら親切心なのかもしれないが、私にしてみれば大きなお世話だ。船の切符が手に入るのならラッキーなのだが、私はどうしてもこの男の世話になる気にはなれなかった。
いったんは建物の中に入ったが、私は「ここに用はない」とタクシーに戻り、再び三峡賓館に向かうよう告げた。
しばらくすると、ようやく三峡賓館のネオンが見えてきた。しかし、車はホテルの少し手前で止まった。そこにあったのは ―― またしても旅行社だった。
さっき「ここに用はない」と言ったのが分からなかったのか? ―― 私はついに切れた。

いいからさっさとホテルに連れて行け!!

私の剣幕に負けたのか、男は渋々といった感じで、ホテルへと車を向けた。

ホテルにたどり着き、チェックインしたが、運転手はまだへばり着いてくる。エレベーターに乗って彼を振りきり、客室でようやくやすらぎの場所を得た。
三峡賓館は星無しだが、同じ星無しでも、オンボロで窓ガラスが割れたりもしていた、前日の山城飯店とは格段の差がある、居心地のいいホテルだった。私の泊まった部屋は比較的上の階にあって、しかも長江に面している。朝になればいい眺めを見ることができるだろう。時折船の汽笛の音が聞こえてくるのも、風情があっていい。
少し気分は治まったが、やはり昭君号に乗れなかったのは痛恨だった。明日は何とか、別の移動手段を探さなければ・・・。

<新着記事>

Google

WWWを検索a-daichi.comを検索
お勧めメディア(Amazon)
明日また旅に出たくなる100の話