バス憧れの大地へ

世界への旅(旅行記)

アジア周遊第6部 北インド

バラナシ-1 ~暴れ牛とベンガリー・トラの細道

2007年9月7日

朝6時半。デリーからの列車が、ヒンドゥー教の聖地・バラナシ(旧称『ベナレス』)に到着した。ここが次の目的地である。
バラナシJN駅から、旅行者の集まるダシャシュワメード・ガートまではリキシャ利用となる。駅前で待機していたオートリキシャのリキシャワラーと交渉の結果、40Rsでダシャシュワメードへ行ってもらうことになる。
さして広くもなく、整備状況も良くないメーンストリートを暫く進むと、リキシャが路肩に止まる。
「オートリキシャは中には入れないのでここまでです」
と言うので、私はリキシャを下り、すぐそこに見えた路地に入って行った。

[これが、バラナシなのか…それにしては人通りもそんなに無いし、ゲストハウスも店も全然無いな]
それに、歩けど歩けどすぐにぶつかるはずの河が見えてこない。
道を間違えたということに気がついたのは10分ほど歩いた後だった。しかも、元の場所に戻ろうとしたにもかかわらず全く違う所にでてしまう。アムリトサルでおかしくなった方向感覚がまだ元に戻らないようだ。 牛
街中には牛が日常的にいる(裏路地にて)

比較的広い道に出た。人が歩くほか、が闊歩したり寝そべったりしている。インドでは当たり前の光景、とお思いの方もいるかもしれないが、実は、記憶を辿る限り牛がこれだけ我が物顔で往来を歩く光景はネパールのポカラ以来なのだ。牛が街中を自由に歩き回るのはヒンドゥー教で神聖視されているからであり、イスラム色の強いデリー、アーグラー、シーク教の街アムリトサル、チベット仏教の街ダラムサラでは殆ど見た記憶が無いのである。
のんびりしている牛なら糞を落とす程度でさしたる害は無い。しかし、この時私がたどり着いた大通りでは、大きな暴れ牛もいた。私が歩いていた道の反対側を、私とすれ違う形で白い大きな牛が勢いよく駆け抜けていく。
[おー、すごいな。牛もギャロップするんだ]
"対岸の牛"を暢気に眺めながら先に進む。と、程なくして地元の人たちが私に向かって何事か叫んでくる。そして次の瞬間、

ドドドドド…

後ろから先ほどの暴れ牛が、私のすぐ横を先ほどと同じような勢いで走って行った…。
バックパックを背負っていた背中に寒気が走った。あと30センチ左を歩いていたら角のある頭が私を直撃していたのだから。
[早くバックパックを下ろして身軽になろう…]
私はあらためて正しい道を目指し、足を動かした。

やがて、道の行き先を示す道路標識が目に入り、ようやく目指すダシャシュワメード・ロードへの行き方が分かった。先ほどリキシャを降りた所からそのまま真っ直ぐの方向に歩けばよかったのだ。
各地からの旅行者が集まる"本物"のダシャシュワメード・ロードは先ほど間違えて入った路地とは対照的に、華やかで、人とサイクルリキシャでごった返すにぎやかな通りだった。

ダシャシュワメード・ロード
ダシャシュワメード・ロード
ベンガリー・トラ
ベンガリー・トラはこんなに狭い(後日更に奥で撮影)

この道を200mほど進んだところで、ベンガリー・トラという横道に入る。ゲストハウスやレストラン、商店などが建ち並ぶ、外国人旅行者の溜まり場的エリアだが、幅2mもない狭い道で、そこを人のみならず犬や牛も行き交うのでかなり歩きにくい。幸い、私が目指していたゲストハウスはベンガリー・トラの比較的浅い場所にあったので、バックパックを背負っての細道歩行からはすぐに解放された。

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