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チベット問題

チベット問題とは

チベットの民族的危機

憲法違反の差別・圧迫

チベットではチベット人に対する差別・圧迫が日常的に行われていますが、それは中華人民共和国の憲法にも違反する行為です。

「中華人民共和国憲法」

第4条 中華人民共和国の各民族は一律に平等である。国家は各少数民族の合法的権利と利益を保障し、各民族の平等、団結、互助関係を維持・保護し発展させる。いかなる民族に対しても差別と圧迫を禁止し、禁止民族の団結の破壊と民族の分裂をもたらす行為を禁止する。

国家は各少数民族の特徴と必要に応じて、各少数民族地区で経済と文化の発展を加速させることを助ける。

各少数民族が居住する地方では区域の自治を実行し、自治機関を設立し、自治権を行使する。各民族自治地方は全て中華人民共和国の不可分な部分である。

各民族は全て自身の言語・文字を使用・発展させる自由を有し、全て自身の風俗習慣を保持或いは改革する自由を有する。

上記のうちチベットについて、中国共産党当局は「各民族自治地方は全て中華人民共和国の不可分な部分である」という箇所を主張するばかりです。
チベット本土において、チベット人はほかでもない国家によって合法的権利と利益を侵害され、差別と圧迫を受け、自身の言語・文字を使用・発展させる自由と風俗習慣を保持或いは改革する自由を奪われています。

チベット人は、民族・民族性そのものの存亡の危機に立たされています。

チベット人のアイデンティティ破壊

中国共産党当局による侵略以来、チベット人のアイデンティティが破壊される施策が次々と行われています。

まず第一にチベット仏教とその信仰に対する破壊です。(これについては『チベットの宗教問題』の項目をご参照下さい)

そして教育。現在チベット本土では、チベット人を漢化したい当局の思惑とチベット語を教える教員の数の減少が相まって、教育現場では漢語ばかりが教えられ、チベット語が教えられないようになっています。そして漢人の移民が大量に入植することににより、至る所でチベット語が漢語に駆逐されつつあります
また、教育内容は中国賛美の「愛国教育」とダライ・ラマ批判の押し付けで、チベット人としての心の抹殺が図られています。

ダライ・ラマ14世はこうした事態を「文化的ジェノサイド(虐殺)」と表現しています。

虐殺

既に「チベットの人権問題」で述べたように、不当に逮捕された"良心の囚人"たちが拷問の結果死に至ったり、死刑にされたりすることが日常的に行われています。
また、2008年3月の蜂起で見られたように、丸腰に等しい平和的デモに対し中国当局は装甲車などの過剰な手段でこれを抑え込み、大勢のチベット人を殺した事件も幾度と無く発生しています。

妊娠・出産の妨害

中国では1979年以来、人口抑制のため「一人っ子政策」が行われていますが、非漢民族にはこれが適用されていません。
しかし1984年、中国政府はチベット人に対して子供を2人以下とする産児制限を課します。農民や遊牧民は適用外と建前上はされましたが、実際には3人目を産むと高額の罰金を課すなど事実上の制限が行われています。
そして、一番酷いのが中絶と不妊手術の強要です。チベット亡命政府の調査によると、チベット各地で"産児制限チーム"が歩き回り、女性を病院へ連れて行って不妊手術を受けさせており、例えば"チベット自治区"では出産適齢女性の30%が不妊手術を受けさせられた(1987年)などの報告が寄せられています。中絶についても、3か月~5か月の婦人たちにも強制的な中絶を実施している、3人目の新生児が殺害されたなどの証言があります。

こうした産児制限について、英国議会人権擁護グループは以下のように述べています。

この中国人の家族計画には2つの動機があるようだ。第一は、中国全体の人口抑制であり、その政策はすべての地域に適用されている。第二は、いままで述べてきたような効果的な手段で出生率を抑えることによって、少数民族問題を抹消せんがためである。

また、不妊・避妊とは逆に、漢人の男性によるレイプ(強姦)・強制妊娠が行われ、チベット人の血を薄められてもいます。

大量の中国人移民

1950年に始まる侵略より、「チベットは面積の割には人口が希薄だ」という論理により、中国からの移民が大量に流入してきます。

正直、チベットに何万人の中国人がいるのか、正確な数を割り出すことは極めて難しいでしょう。というのは、住民登録をしていない移民も少なくないからです。

アムドやカムでは早くから移民が急増し、チベット亡命政府は1990年の時点で住民登録した者、していない者を合わせて中国人の人口がおよそ740万人まで膨れ上がっていたとの見積もっています。

ウ・ツァンでは特に1980年代以降、移民が急増しました。
統計によれば、"チベット自治区"の人口は274万人、うちチベット人は92.8%(約254万人)、漢人は6.1%(約16.7万人)とされています(2004年)。またラサは人口42万人のうちチベット人が87%と(約36.5万人)とされており、その他の民族は約5.5万人ということになります(2003年)。
しかし、私が実際にラサを訪れた際、それよりはるかに高い割合で中国人がいた印象がありました。
ポタラ宮周辺は完全に中国人の建てた無機質な風景に取って代わられ、チベット人はジョカンとバルコル周辺の狭いエリアに追いやられています。
2006年には"チベット侵略鉄道"とも揶揄されるチベット鉄道が開通してしまいました。市街地から離れたラサ駅近くのエリアには11万人もの移民を収容できる街が建設されつつあるとの報告もあり、中国人移民はこのままでは今後もとどまることなく押し寄せてくるでしょう。

正確な人口は計りかねますが、どうやらチベットの漢人は既に数の上でチベット人を凌駕しているようです。

こうした優遇された"よそ者"が大量に流入してきた結果、物価は高騰し、食物は不足し、土地が次々と埋め尽くされていきます。そのあおりを受けるのは常に被支配民 ―― 即ちチベット人なのです。


以上のことも原因として、別ページで既出のように、1949~1979年の間に120万人を下らないチベット人が(人権侵害や飢餓などで)不自然に死亡しているのです。

※              ※              ※

中国のチベット侵略以来、大勢のチベット人が国外に亡命しており、彼らが安全に暮らすことができれば民族そのものの消滅は辛うじて免れることができるという見方をする人もいることでしょう。
しかし、本土でチベット人が根絶やしにされてしまえば、チベットの歴史はそれで終わってしまいます。
それに、難民たちの最大の念願は祖国に戻ることです(亡命先で生まれた祖国を知らない二世、三世すらそうなのです)。チベット本土からチベット人がいなくなり、完全に中国人の土地となってしまえばそれも叶わなくなります。帰る所を失ってしまったら、彼らは何を拠り所にし、どこに行けばいいというのでしょうか。
"民族浄化"はチベット民族の血脈が続けば回避されるいうものではありません。チベット人の故郷からチベット人がいなくなってしまえば、それは"民族浄化"の成功を意味するのです。

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