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世界への旅(旅行記)

大陸中国・西安―河南―北京

天壇公園ほか ~旅は道連れ・2


祈年殿
天壇公園の祈年殿
頤和園を見終わって、次の目的地は天壇公園だ。しかし、ここからはかなり遠く、バスなどで行っては時間がかかりすぎてしまう。少々高くつくが、今回は1人ではないことだし、「時は金なり」ということで、タクシーで行くことにした。
天壇公園は、北京中心街から少し南へいったところにある、明清時代に皇帝が五穀豊穣を祈願した場所だ。ここのシンボルと言えば祈年殿だが、私がこの公園で一番訪れたかったのは、もっと別な所にあった。それは、回音壁である。
下の図のように、円形の壁の内側で「A」が壁に向かって声を出すと、その声が壁を伝って、壁に耳を寄せている「B」に聞こえるのである。
なぜ私がここを楽しみにしていたのかと言うと、その数年前に放映されたNHKテレビ「中国語会話」の寸劇の中で、この場所を舞台とした印象的な場面があったからだ。
回音壁の図
若い夫婦が新婚旅行でここを訪れ、夫が妻に「そこに耳をあててごらん」と言う。 言う通りに妻が壁に耳を当てると、夫は

我愛你!」 (wǒ ài nǐ=愛してるよ)

これを2度も繰り返された妻は、真っ赤になって「何うそばっかり言ってるのよ!」と、照れ隠し。
まあ、これだけなら他愛もない話なのだが、実は私が見たこの寸劇は再放送で、この話には後日談があったのだ。
何と二人はその後、本当に結婚してしまっていたのだ。
そしてその再放送時のアシスタントが、新妻を演じていた女性で、この日はえらく、緊張していたのが印象的だった。
そうしたストーリーやエピソードもさることながら、壁を伝ってきた夫の声が、少々エコーがかかってはいるものの、割とクリアに聞こえていたことも、記憶に鮮明だった。
[本当にあんなにくっきりと聞こえるのか? どうせアフレコなんだろうけれど]
そんな事を思っていたので、どんな風に聞こえるのか、ぜひとも試してみたかった。
その意味で、この日H君に出会って、ここ天壇公園の訪問に連れができたことは幸いだった。さすがに男同士で「我愛你!」という訳にはいかなかったが、取りあえず当たり障りのない言葉で、お互いに”壁電話”を試してみた。
確かに、声ははっきりと聞こえる。いやむしろ、例の寸劇で聞いたよりも、クリアに聞こえる位だ。やはりあれはアフレコで、雰囲気を出すために、逆にわざとこもった声にしていたのだろう。
天壇公園を後にして、友誼商店で(偵察も兼ねて)H君の土産の買い物に付き合う。そうしているうちに、そろそろ夕飯時だ。
「折角2人で食事するんだから、1人では食べに行けないものがいいかな」
「それに、今日はクリスマスだ。豪華な鳥料理なんて、どうだろう」
となると、目指す料理はただ一つ ―― 北京ダックだ。
本場の北京ダックと言えば「全聚徳」が有名だが、私たちはもっと庶民的な便宜坊に入った。北京ダックは前回の旅の上海以来、2度目だが、この店の料理はあの時よりもさっぱりしていて、食べやすかった。
食事をしながら、旅の話が弾んだ。
「今、北京外語学院学生寮に泊まっているんだけれど、あそこは交通の便がいまいちで…もう2、3日したら、中心街のホテルに移ろうかと思っている」と私が言うと、H君は私に、彼が今泊まっているという越秀大飯店のことを話してくれた。地下鉄宣武門駅を降りて地上に出ると、すぐ目の前にあるという。宿泊代は1泊140元と、私にとっては少し高かったが、そのアクセスの抜群の良さに、少し気持ちを引かれた。
その後、彼とは帰りの地下鉄で互いに「良い旅を」と言い合って別れ、結局、1日だけの付き合いに終わってしまった。
(一人旅は悪くないけれど、一人ではできないことも、結構有るな)
そんな事を感じた、1日だった。

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